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翌日。
ミツさんは誰よりも早く球場に来ているはずだからと、自分も由伸と一緒にいつもより早めに来て、目当ての人物を探す。


―――いた。

時々こうしてミツさんはフェンスに寄り掛かり、どこか遠くを見ている事がある。

そっと近付き声を掛けようとした時、ミツさんが静かに話し始めた。


『昨日は変な態度取ってごめん。…困らせて、ごめん。
仲良くしてくれるのは嬉しいけど、同時にちょっと、怖かった。でも、ちゃんと向き合ってくれる人がいるんだから、逃げるのは止めようと思って。』

『その気持ちを見ないフリなんて、もう出来るわけないよな?颯一郎。…由伸も。』

『2人とも、ありがとう。』

そう言いながらミツさんは俺達の目を見て、そっと名前を呼んだ。




「……ねぇ、ミツさん、もっかい呼んでほしいっす」

『ちょっと待って、そんなに慣れないから、すぐは無理。改めて言われると恥ずかしい…』

「慣れるなら練習っすよ、練習!ミツさんの大好きな野球と一緒!練習あるのみっす!」

『わかったから、ちょっとずつな!…由伸、颯一郎』

ミツさんが照れているせいか何となくこっちまで気恥ずかしくなり、3人で顔を見合わせた後、一緒に笑い合った。






由伸と颯一郎が向かい側から歩いてくるのが見えたため、何となくその先にミツさんがいるのかなと思った。
2人とそのまますれ違い、そっと辺りを見回すと、ミツさんは案外すぐ近くにいた。


ミツさんは足音が近付いてきたことに気付いて振り向いたが、それが俺だとわかると、控えめに笑いかけてきた。

『圭太、昨日はありがとう。』

「え、ミツさん、今、」

『圭太が気付かせてくれたから、待っててくれるってわかったから、…ちょっと一歩前進、って感じ?』

この歳でも成長期なのかなー?と、手をひらひらとさせながら去って行ったミツさん。
最後の方は照れ隠しのようなことを言っていたが、その去り際、ミツさんの目尻には光るものが見えた。



また少し、ミツさんに近付けたように思う。
……あぁ、やっぱり好きや。






(圭太、何か良いことあったんでしょ)
(さすが宗ちゃん、わかる?)

うしろの正面→←さぁ、名前を呼んでみようね



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作者名:すずめ | 作成日時:2024年3月25日 17時

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