祓い給へ清め給へ (ページ16)

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「ミツさん…？」

あれからもまだ気持ちが落ち着かなくて、もう少し頭を切り替えてから帰ろうと人気のない通路をふらふら歩いていると、聞き慣れた声が俺を呼んだ。

『あ、圭ちゃん……』

「どうしたんすか、ミツさん。顔色悪いやないですか。」

圭太は俺の顔を見るなり、焦ったように駆け寄って来た。
あの2人じゃなくて良かったとほっとしたものの、今は誰にも会いたくなかった。
きっと、今の俺は人に見せられるような顔をしていないだろうから。

『あぁ、いや、何でもないから大丈夫。』

「でも…」

『ほんとに何でもないから、』

心配かけてごめん、となるべく早くこの場を離れようとすると、圭太は怒った顔をして俺の肩を掴み、身体を通路の壁に押し付けた。

「嘘や。何でもないわけないやろ、アンタ。」
「そんな泣きそうな顔して、なのに何で誤魔化そうとするんすか。……俺には、言えないことですか。」

『それは、その…』

何も言えず、思わず俯いてしまう。

「……名前を呼ばないことと、関係、してますか。」

ハッと反射的に顔を上げると、圭太の視線と絡み合い、そのまま目を逸らせなくなってしまった。

『、なんで…』

「さっきの2人とのやりとり、見てました。ミツさんは俺達を遠ざけることはしない。でも、いつもどこかで一線引いてる。」
「俺だって、ずっとミツさんを見てたんです。何も気付かないと思ってたなら、俺のこと、見くびらんでください。」