アオハル返せIV【稲荷崎】

150.#アオハル ページ25

せめてサナには迷惑も心配もかけないでおこうと、あの子は察しがいいから気づくかもしれないけど、いつも通り振る舞う。




『サナおはよ！昨日さ、めっちゃ泣ける映画･あれ、8年越しの花嫁見たんだけどめちゃくそ泣いてさ。朝起きたら目がボンボンに腫れてて、目ぇないやん！って鏡に向かってつっこんじゃったよ』




自分でも何が言いたいか分からないけど、ポンポン言葉が出てくる。




「痛い」




『どこが？』




「あんたの空元気、ごっつ痛いで。治のと花井ちゃん、付き合い始めたんやろ」




『え、なんで知ってるの』




「後夜祭、2人でずっとおったから。結構噂なってんで。Aと治破局！って」




『付き合ってないし』




サナは呆れたようにため息をついた。




「ゆーた通りやったやろ、治の気ぃ変わってしもてもしゃーないて。自業自得や」




『あなた前世鬼だったりする？』




慰め、という言葉を知らないんじゃないかってくらい攻撃的なサナ。




でも、そんなわたしよりよっぽど治くんのほうが辛かったに違いない。サナはきっとそれが言いたいんだ。私が二度と、人に同じ思いをさせないために。




我ながらいい友だちを持った。




「告白せんの？」




『わざわざ人が前に進もうとしてるとこを邪魔するなんて最低じゃん。今更言ったって虫がよすぎる』




ゆっくり諦めてくわ〜と着席した。サナの呟いた、




「未練タラタラのくせになんゆーてんねん」




って言葉は聞いてないふりをした。

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