アオハル返せIV【稲荷崎】 (ページ35)

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部活終わり、思わぬ寒さに持ってきたマフラーを急いで巻く。寒空の下治くんを待たせているので、急いで校門前へ向かう。

『ごめん』

「おん……マフラー巻いとんのや」

『寒いでな』

治くんといると関西弁が増えた。それは彼のが移るせいなのか、それとも気が抜けるからなのか。

すっかり日が落ちて街灯が眩しく感じる。

でも、それより。

『治くん、手が寒いよ』

「手袋せえ」

なんてつっけんどんな態度を取りながらも手を握ってくれるのが嬉しい。

ふと治くんが立ち止まったので腕が後ろに引っ張られる。

『どうしたの治くん。バス乗り遅れるよ』

「……なあ」

『ん？』

「ちゅーしてええ？」

『ん″!?』

マンガ風にすれば目玉が飛び出てる。脈絡のない治くんのお願い(？)に戸惑いを隠せない。

「いや、ほんまはいつしよかなーとか、初デートん時とかかなーとかいろいろ考えとったんやけどあかんわ、もう我慢できへん」

『だいぶぶっちゃけたね』

私の返事を待たずに治くんの顔が近づいてくる。思わず目を閉じて治くんを受け入れる。瞬間、重なる唇。

治くんが私の肩に乗っかる。不貞腐れたように治くんが言う。

「そういやAのファーストキス、ツムやねんな。俺やないねんな」

『嫉妬ですか？』

「嫉妬です」

即答する治くんが愛しくて仕方ない。あのキスは不本意だよ、と笑って言った。脳内で侑くんが怒ってる。ムードの欠片もない初キス。込み上げる愛しさが止まらない。

『ねえねえ治くん』

あのね、大好き。

*END*