私得短編集 <オリジナル> (ページ3)

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珈琲の香り　.。　〈片思い〉　改良版ページ3

※ポエム感高め。苦手な人は見ないでね。

『今日も、お薦めで御願いします.。』

私は、今日もとあるカフェに来ていた。
オーナーの名前は岩水蒼。一年程前から一人で経営している.。

私が此処に通い始めたのが、丁度一か月程前。

生きる事に嫌気が差して、只、流れる時間に流されるだけの日々を過ごしていた。

帰り道、「このまま生きる位ならいっそ... 」なんて考え、その前に自分の好きな事をしよう、と何時も仕事の為に通っていた道を、ふらふらと彷徨っていた時、此処の看板が目に入った。

静かな雰囲気で、カウンター席、しかも四席しかない。

その時の私は、何故か吸い込まれるように此の店に入った。

其処には、カフェの雰囲気を具現化したような優しく落ち着いた雰囲気のオーナーが居て、私を歓迎してくれた。

社交辞令でも、あの時の私には、「ようこそ」という言葉が、私の存在を認めてくれるような言葉で、心から感動したのを覚えている。

それから、珈琲が苦手なのに、ずっと通っている。

一人でその日の事を思い出していると、蒼君が珈琲を出してくれた。

ふわ、と珈琲の香りが私を包む.。

『葵君.。この珈琲ｯて何.？』

「これ.？。キリマンジャロ.。」

私は口を付ける前に、珈琲の香りをじっくり愉しむ。

苦い.けど安心感のある、そしてどこか懐かしい此の香り。

『 ……頂きます.。』

「どうぞ、」

『ふ - ふ - 』と冷まし乍、一口、口に含む。

すると、いい薫りが先程より、強く感じられる.。

呑み込めば、体が暖まり、心が満たされていく様な感覚に陥る。

『 ...、今日も美味しいね.。』

「ならよかｯた。有難う.。」

私は苦い物は基本的に苦手だ.。なのに、珈琲だけは飲んでしまう.。

苦いけど、落ち着かせてくれて、時には感動させてくれて.。

それは恋と同じだと思う.。

私は、この珈琲と蒼君の存在に ”恋 ” しているのだろう。蒼君も、それに気付いている。
でも、『お客様』と『店員』だから、それに踏み込む事はない.。

それは、大人の付き合いで、恋なのかな.。
学生の時みたいな恋ではない.。

でも、私は、珈琲が好きだ.。

『御馳走様でした.。』

「いつも有難う、。また来てね.。」

優しく微笑む葵君.。
それは、あの日と同じ。オーナーとしてのお客様に対する、社交辞令でしかないだろうけど、。

( 何時か、気持ちを伝えてもいいかな )

そう想うのは、悪い事なのでしょうか..．・