2・体内にて ページ4
「おかえり。楽しんできた?」
「…………」
「女の子拐って島で二人きり何して来たの?あ、二人きりじゃなかったね」
「…………」
「ふふふ、疲れちゃった?」
蝋燭の火が揺らめく。
オウニ君逃避行から数時間後。案の定捕らえられた彼らは、仲良く体内送りにされてしまった。
私はその檻の前で膝を抱えて座り、一方的に檻の中に話し掛けている。
「……何が聞きたい」
地面に寝転んでこちらに背を向けたまま、オウニ君が云った。表情は見えないけれど声音は低く、警戒心が剥き出しだ。
私は構わず、穏やかな口調で続けた。
「勿論、外の世界の話。きみがあの島で見てきたモノを知りたいの」
この答えは半分嘘で半分が本心だ。
私は外の世界には興味を抱いていない。本当に訊きたいのは、彼があの島で見てきたモノ。それについてのみ。
私が求めるモノが、あの島に在るのか否か。
それが知りたい。
しかし正直に話すとややこしくなりそうなので、あくまでも何も知らない風に装って訊ねる。
「あの島の渡航は禁じられちゃったでしょ?だから、きみたちに聞くしかないの」
島への渡航を禁じた時点で『あの島には何かある』と云っているも同然なのだが、念のために答え合わせを行う。
私が言葉を切ると、体内に沈黙が降りた。
オウニ君は口を開く気配はない。私には話す事は無いと云う意思表示だと受け取り、標的を隅っこで膝を抱えているデストロイヤー君に移す。
「きみは?」
「へっ?」
自分に話を振られると思っていなかったのか、彼は間の抜けた声を上げた。
「沢山の……お墓を見ました」
おずおずと言葉を紡いだ彼は、チラリと隣のオウニ君に視線を向ける。云っても良いものか迷っているのだろう。
思わず唇からふふふ、と笑いが洩れる。
「そっか。ありがとう」
私はお礼を云って立ち上がり、軽く伸びをした。狐につままれたような顔のデストロイヤー君に背を向け、体内区の入口へと歩き出す。
土の匂いがする体内区から地上に出ると、今夜は月が明るかった。
「……いい夜」
今から私がやろうとしている事を知ったら、彼はどんな反応をするだろう。
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猫目 - 今更ながらコメント失礼します!同じく私もシュアン推しなので見つけたときめっちゃテンション上がりました!見ていらっしゃるかは分かりませんんが更新応援しております(^^) (2019年3月26日 20時) (レス) id: 619380b1ab (このIDを非表示/違反報告)
りぃふ - はじめまして。今更コメント失礼します!私はクジ砂中でシュアンがとても好きなので、この小説を見つけた時はすごく嬉しかったです!このお話のおかげで今だいぶシュアン沼にハマってます…笑お忙しいとは思いますが、更新楽しみに待っています。(*^^*) (2018年6月24日 19時) (レス) id: f3d7bfc71d (このIDを非表示/違反報告)
なつみん - るりさん» ありがとうございます!同士嬉しいです!最近滞り気味ですが、時間を見付けて更新します! (2018年2月20日 17時) (レス) id: 1a2989d09e (このIDを非表示/違反報告)
るり - 初めまして!私も団長さんが好きです!とても良い設定、話で好きになりました。これからもがんばってください続き待ってます (2018年2月16日 17時) (レス) id: 1a80d02d72 (このIDを非表示/違反報告)
なつみん - 裕貴さん» 裕貴さん、はじめまして!私も団長さんが一番好きなので、そう言って頂けると嬉しいです。皆様のコメントを励みに、これからも頑張ろうと思いますので、どうぞよろしくお願いします!コメントありがとうございました! (2017年12月22日 6時) (レス) id: 1a2989d09e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なつみん | 作成日時:2017年12月17日 16時