木漏れ日のような ページ3
〜しるこside〜
動画を撮らないとなるとこんなに暇になるのかと、この2日間で実感している。
Aにしっかりと休養をとるよう言われているため、編集作業も出来ない。
その代わり最近は、はこたろーやAが編集を行っている。
昼食後は、2人の邪魔にならないよう部屋で時間を潰していたが、3時間ちょっとで我慢の限界が来た。
コーヒーを飲むという名目の下、リビングに顔を出す事に決めて部屋を出る。
リビングに入ると、くつろぐはこたろーとソファーで眠るAの姿があった。
し「あれ、A寝ちゃってる？」
は「うん、長いこと撮ってたから流石に疲れたのかもね。」
そういえばAは、俺らの中の誰よりも早く昼食を食べ終えて、部屋に向かっていた。
Aが撮影をしやすいようにと、動画を撮る時には別の部屋を使ってもらっている。
午後は自分が部屋にこもりきりだったこともあって、どれくらいの時間撮っていたのかは分からなかった。
いずれにせよ、慣れないことを長時間続ければ疲れるのは当然だ。
俺が休む代わりに、Aに無理をさせているんじゃないかと心配になる。
不安を拭うように、寝ているAの前髪をさらりとはらった。
は「あ…」
はこたろーの驚いたような声に振り返ると、視線がこちらに注がれていた。
し「ん？なに？」
は「いや、それ…Aも兄さんに同じ事してたから」
俺がリビングで昼寝をしてしまった時のことだろうか。
撫でられていたことはぼんやり覚えているけど、前髪をはらわれた事は知らなかった。
そろそろ前髪を切る時期かなと考える。
は「Aと兄さんは似てるね。」
真意の分からないはこたろーの言葉に不意を突かれる。
し「え？Aとはこたろーの方が似てるよ？」
昔から何においても2人の好みは似ていた。
俺が少し羨ましいと思うぐらいに。
俺の言葉を受けたはこたろーは、何とも言えない表情を浮かべている。
「どうしたの？」と聞くと、「何でもない」と返された。
「何でもない」は大抵、何かがある時のサインだ。
分かっていたけれど、それ以上深追いすることはやめにした。
「羨ましい」と思う俺の心が読まれてしまったのか、はたまた別に思うことがあったのか…
どっちにしてもその本心は、きっと兄さんには教えてくれないんだろうね。
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作者名：梔子 | 作成日時：2022年4月3日 11時
