40話 ページ42
どうしたものか、とAは鏡の前でため息を吐いた。
組織に潜入するのであれば、十八番の黒髪真面目っ子はあまり向いていない。
真面目に見えるし、何よりあまりバカっぽく見えないのだ。
相手を油断させるのにはあまり向いていない。
パラパラと、作品を作るときにファッションの参考にした雑誌を流し見る。
様々なコーディネートが載っていて、キャンパスライフではそれなりに役に立ちそうだったが、少しだけ今求めている物からずれているような気もする。
鏡を見る。
目の前に映っているのは自分だ。
何も偽っていない自分自身の姿。
あの時目覚めてから――
あの日から、Aがこの姿で出歩いたことは無かった。
あまりに目立ちすぎる容姿で、ジンに似ているようで、正反対の姿。
組織に居るにふさわしくない色彩だと、誰も口にしていないのに、他でもないAがそう感じていた。
美しくて綺麗で、好きよ、と彼の有名女優は口にしていた。
冷酷な彼だって、別に嫌っているわけではなさそうだった。
むしろ、好意的に捉えられていたような気もする。
だが、やはりAには隠したいと感じさせるものだ。
――もしかしたら、あの日の前の出来事が、Aにそう思わせるのかもしれなかった。
「――……美しいと思う色がある。けれど、美しいと思ったその色を、もう彼はあの時のままでは見つめられなかった」
スッと鏡の表面を指先でなぞる。
鏡の向こう側で、死の天使もまた、同じように指を滑らせていた。
「その色を捉えることは辛く、苦しく……気づけば彼の世界から、赤以外の色は消え去っていた」
見つめれば、見つめ返される。
痛いほど真っ直ぐに、美しい視線だった。
何故、鏡の中のあなたは、こうも歪みを知らないのか。
何故、鏡の中のあなたは、現実を見ても尚、穢れを纏わないのか。
何故、鏡の中のあなたは、そんなにも……そんなにも、泣きそうな顔をしているのか。
「……そうして、そうして彼は気づいてしまった。彼が唯一正常に捉えられるその赤は、すべての者が平等に持っている物なのだと――気づいたら彼は、彼は……暴かずにはいられなかった」
ぽつりぽつりと、口から自身の作品で使った言葉が零れ落ちた。
異常性を孕み、読む人が読めば、『虚ろなる世界の霧』よりも深い作者の闇を感じると言われているミステリー作品。
――『色彩地獄と赤天使』
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はちうん(プロフ) - くろさん» 結構危うい線ばかり渡っているので気を付けます。コメントありがとうございますね。 (2017年7月12日 21時) (レス) id: 52741b67fc (このIDを非表示/違反報告)
くろ(プロフ) - え、昴さんもアルバム見ちゃうの?コナン=新一だともろ、怪しまれるんじゃw更新待ってます。 (2017年7月11日 10時) (レス) id: 63c7811fee (このIDを非表示/違反報告)
はちうん(プロフ) - くろさん» ありがとうございます。これからも頑張りますね。 (2017年5月16日 6時) (レス) id: 8bc22cead9 (このIDを非表示/違反報告)
くろ(プロフ) - メンタリスト!あまりというか今まで読んだことないお話です!!続き楽しみにしてます! (2017年5月15日 15時) (レス) id: b1672a66d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はちうん | 作者ホームページ:http://id35.fm-p.jp/408/yuna3lone/
作成日時:2017年4月27日 23時