34話 ページ36
「久しぶりだな、A。講義に来ないから心配してたんだ」
授業後に、連絡をくれていた友人の一人に声を掛けられる。
ごめん、久しぶり、と挨拶と謝罪を返しながら、場所を変え、雑談を交わす。
しばらくは廊下で話していたが、二人ともこの後授業が無いので、本格的に場所を移ることにする。
と言っても、大学への通学を楽にするためにこちらに引っ越してきたばかりのAには話し合いができる場所のあてなどない。
此方に来てからまともに行ったのは本屋と銀行、それに病院くらいだった。
後は一応、近所のコンビニやスーパーにも行ったが、コンビニはイートインではなかったし、スーパーは話をする場所に向くとは言えない。
よって、話す場所を確保するのは友人の仕事となった。
こっちがおすすめなんだ、と言う友人に連れて来られたのはポアロという店だった。
少し前に沖矢昴という人物と待ち合わせで使った店だった。
と言っても、結局Aはその待ち合わせに行けてはいない。
初めてだ、と数日前に味わうはずだったドキドキを感じながら入店した。
「ここの店は軽食がうまいんだ。ほら、あそこの人……あの人、サンドイッチ作るのがうまくて。腹減ると思うから、頼んでみるといい」
ほら、と指さした先に居るのは金髪に褐色の肌を持つ青年だった。
へぇ、と応えながら言われた通りにそれとアイスコーヒーを注文する。
特別好きなわけではなかったが、談笑中に寝落ちするようなことは避けたかった。
お願いします、と注文をして、品物が来るまではぼんやりと店の雰囲気を味わう。
パッと見た後、暇になってしまったので、今度は人間観察に移行した。
看板娘っぽい女性は屈託がない笑みを浮かべていて、性格も裏表がなさそうだった。
一方、金髪さんは同じく綺麗な笑みを浮かべているが、感覚を信じるならば彼女ほどいい人というわけでもなさそうだった。
まぁ、あれくらいの年齢の男性ならば普通かも、と己を納得させてから友人に向き合い、休んだ分の授業の概要を聴く。
「――とまあ、軽く説明できるのはこれくらいか。後でノートの写真送るから、単位は落とすなよ」
「うん、ありがとう、気を付けるよ」
単位を落とさないとしても、卒業まであの大学に通っていられるかはやや怪しかったが、友人の気遣いに笑みをこぼす。
優しくしてくれる友人がただありがたく、嬉しかった。
一般人の知り合いはそう多くない。
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はちうん(プロフ) - くろさん» 結構危うい線ばかり渡っているので気を付けます。コメントありがとうございますね。 (2017年7月12日 21時) (レス) id: 52741b67fc (このIDを非表示/違反報告)
くろ(プロフ) - え、昴さんもアルバム見ちゃうの?コナン=新一だともろ、怪しまれるんじゃw更新待ってます。 (2017年7月11日 10時) (レス) id: 63c7811fee (このIDを非表示/違反報告)
はちうん(プロフ) - くろさん» ありがとうございます。これからも頑張りますね。 (2017年5月16日 6時) (レス) id: 8bc22cead9 (このIDを非表示/違反報告)
くろ(プロフ) - メンタリスト!あまりというか今まで読んだことないお話です!!続き楽しみにしてます! (2017年5月15日 15時) (レス) id: b1672a66d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はちうん | 作者ホームページ:http://id35.fm-p.jp/408/yuna3lone/
作成日時:2017年4月27日 23時