検索窓
今日:6 hit、昨日:1 hit、合計:62,202 hit

23話 ページ25

「でも本当は――確信はありませんでした。彼女を逃がさずに捕まえられる自信はなかった。でも、あそこで爆破されるよりはマシだったんです。彼女も死にたくはなかっただろうし」


だから、自分が警察の目をごまかしている間に逃げろって言ったんです。

放っておけば川に身を投げそうな表情だった。

まるで、それは――


「あそこに守りたい人がいたし、僕にはあまり、生に執着する理由がなかった」


どうして、と訊ねる声が震えた。

ふと、被害者の顔を見た時の彼を思い出した。

死に対して、抗体があるような、落ち着いた表情。


「僕にも、好きな人がいたんです。――でも、彼女は僕を置いて行ってしまった。いや、僕が置いていかせてしまった。……こんな話、君みたいな子供にはあまりわからないよね」


ごめん、と言った彼は、そっと自分に背を向け、本屋から離れた道に足を踏み出す。

待って、と声を掛ける。

ん、と彼はゆっくり振り返った。


十分に距離が開いている事を確認して口を開く。


「お兄さんは、もしかして……悪い人、なの? この世にいることが、戸惑われるくらいに」


ぽちゃん、と魚が跳ねる音がした。

長いような、短いような沈黙が流れる。


「……うん。そうだね、たぶん僕は君のいう悪い人ってやつだ」


彼は迷うように視線を彷徨わせた後、何処か開き直った様に笑みを浮かべた。


「好きだった人もね、置いて行かれたのは僕がこういう人間だったから」

「名前は?」




「――……シェリー。僕の、大切だった人だ」



聞き覚えがある声だと思っていた。

でも、初めて聞く様な声だとも思った。

だから、彼の炙り出しの時の様子をみて、もしかしたら変装するのが得意なのかもしれないと思った。

そうしたら余裕ができて、そして不意に思い出した。


自分たちが待っている白神先生という人はずいぶん登場が遅いと。

特徴のある服の人だったし、茶髪だった。

変装していると知らなければ気づかなかった。

でも、気づいてみれば確かに、無駄に推理するような力があるのも、一般人を追い出した場所に居た理由も簡単に説明がついた。


「――人に語れるような過去はありませんでした」


彼の声が、彼のデビュー作の冒頭を呟いた。

衝撃で呼吸が乱れそうになるのを必死に抑えて、彼の姿を探したが、彼はもう何処にもいなかった。


彼の好きだったという人……。

彼は組織に黙っていてくれるだろうか。

あまり希望の無い考えを抱いて川を見た。

24話 幕間→←22話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (40 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
85人がお気に入り
設定タグ:コナン , 男主
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

はちうん(プロフ) - くろさん» 結構危うい線ばかり渡っているので気を付けます。コメントありがとうございますね。 (2017年7月12日 21時) (レス) id: 52741b67fc (このIDを非表示/違反報告)
くろ(プロフ) - え、昴さんもアルバム見ちゃうの?コナン=新一だともろ、怪しまれるんじゃw更新待ってます。 (2017年7月11日 10時) (レス) id: 63c7811fee (このIDを非表示/違反報告)
はちうん(プロフ) - くろさん» ありがとうございます。これからも頑張りますね。 (2017年5月16日 6時) (レス) id: 8bc22cead9 (このIDを非表示/違反報告)
くろ(プロフ) - メンタリスト!あまりというか今まで読んだことないお話です!!続き楽しみにしてます! (2017年5月15日 15時) (レス) id: b1672a66d3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:はちうん | 作者ホームページ:http://id35.fm-p.jp/408/yuna3lone/  
作成日時:2017年4月27日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。