17話 ページ19
お嬢さんの名前は、と訊ねる。
明るい茶髪の少女はジッとこちらを見上げて黙りこんだ。
上目遣い、いや、睨まれているだけなのだろうか。
「灰原哀……アイは哀しいって字よ」
「へぇ……えっと、画数が少なくていいね」
他に何をいえばいいのかわからないまま、アホみたいなコメントが口を突く。
コミュニケーションが得意というわけではないので相手の喜ぶ言葉がわからない。
仕事の時みたいに気持ちを読んでもいいのだけれど、サインを書く方に意識が集中しすぎていてうまくできなかった。
サインを失敗するわけにはいかないので、考えている以上に緊張するし神経を使うのだ。
できるだけにこやかな笑みを目指してできた本を渡した。
少女の番が終わると、三人の子供たちもトコトコと後を追う。
あ、と少しだけ焦った声を上げる女性に、声を掛ける。
「ここは書店ですし、あの子たちも流石にココから出ることは無いと思うので大丈夫だと思いますよ。えっと――お名前は?」
「毛利蘭です。蘭は花の名前で」
「あぁ、オーキッドですか。確かに、貴方によく似合う花ですね」
そう言いながらサインを書く。
視線を本に向ける。
蘭は画数が多い。
誤った文字を書かないように意識を集中させる必要があった。
ハイどうぞ、と差し出せば嬉しそうな笑みを向けられる。
眩しい笑みだ、そう思いながら次の人を呼んだ。
残すところあと数人。
サイン会も無事に終わりそうだった。
サイン会も無事に終わり、あらかじめお店の方に用意してもらっていた部屋でまずパーカを脱ぐ。
変装も解かなければならない。
メイクの跡が顔に残ってしまうと怪しさ倍増なので、拭いた後に軽く洗う。
やや濡れてしまったが、ウィッグなので問題ない。
ウィッグを外すと鏡に映ったのは見慣れた黒髪だった。
さっきの外ハネも健在だ。
シャツを着替えて首の詰まっていないTシャツの上に腕まくりをしたシャツを羽織る。
ズボンもジーパンに着替え、眼鏡を色から黒縁ウェリントンにチェンジする。
アメリカの学生らしくスクエアを使用しても良かったが、此処まで素顔を晒して眼鏡まであちらで使用していたものを用いると何があるかわからない。
こんな平和そうな街とはいえ、情報社会、アメリカでの件を追っている方々に見つかってしまうのは困るのだ。
大きめのリュックに着替えをたたんで袋に入れてしまい、カモフラージュの本を数冊入れて閉じ、部屋を出た。
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はちうん(プロフ) - くろさん» 結構危うい線ばかり渡っているので気を付けます。コメントありがとうございますね。 (2017年7月12日 21時) (レス) id: 52741b67fc (このIDを非表示/違反報告)
くろ(プロフ) - え、昴さんもアルバム見ちゃうの?コナン=新一だともろ、怪しまれるんじゃw更新待ってます。 (2017年7月11日 10時) (レス) id: 63c7811fee (このIDを非表示/違反報告)
はちうん(プロフ) - くろさん» ありがとうございます。これからも頑張りますね。 (2017年5月16日 6時) (レス) id: 8bc22cead9 (このIDを非表示/違反報告)
くろ(プロフ) - メンタリスト!あまりというか今まで読んだことないお話です!!続き楽しみにしてます! (2017年5月15日 15時) (レス) id: b1672a66d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はちうん | 作者ホームページ:http://id35.fm-p.jp/408/yuna3lone/
作成日時:2017年4月27日 23時