第44話 Side/Bangtan Boys ページ44
最後までその調子で弾き切った青年は、ギターを抱きしめたまま動きを止めた。
歌う事をやめた彼の口が、何かの単語を呟く。
そのまま俯いてしまった青年が、何分経ってもその姿勢のまま動かなかったので、心配になってホソクと一緒に様子を見に行った。
もしかするととんでもないお節介なのかもしれないが、何かを呟いた時の青年の、思いつめたような表情が脳裏にこびり付いて、他人事だったけれど不安を懐かずにはいられなかったのだ。
「大丈夫、ですか……?」
「具合が悪かったりします?」
ホソクと一緒に彼の隣に行って声を掛けてから、そもそもこの青年が韓国語を話せるか少しだけ心配になった。
自分たちの曲を歌っていたのだから杞憂かもしれなかったが、상남자を歌う前は洋楽ばかり演奏していたのだから可能性はゼロではなかった。
ラップもゆっかりだがカットはしていなかったので、もちろん可能性としてはとても低かったが。
びくり、と声を掛けられた青年の肩が跳ねた。
弾かれたように顔を上げた青年の目は涙で濡れていて、ナムジュンはやってしまったと頭を抱えたくなった。
プライベート、これはとても自分たちが介入していい時間じゃなかったのだと、後悔がムクムクと湧いてきた。
けれど、ナムジュンやホソクより先に謝罪をしたのは何故か青年の方で、謝りながら雑に涙を拭ってギターを持ったまま立ち上がる。
「すみません、お気遣いいただいたようで。演奏もずっと聴いていらっしゃった様なのに、場所も考えずにこんな姿をお見せして……お恥ずかしい限りです」
「いや、演奏を聴いて勝手に居座ったのはこちらですから」
「すごい上手な演奏で思わず聴きいっちゃって、ごめんね。ギターはよく弾くの?」
「はい。趣味です。外ではあまり演奏しないんですけど……ここなら声が届くかなと、思いまして」
そう言って、青年はギターを置くと、手を合わせてから包装の外された花束を海に放った。
それが意味することが分からないわけではないので、一緒になって手を合わせた。
しばらくの祈りの後、青年はギターを片付け始めた。
あまり見たことのないギターケースに、ホソクは興味津々のようで、様子を窺いつつ青年に話しかけていた。
そこから始まる雑談に混ざりながら、ナムジュンは数時間前までは抱えていた悩みがいつの間にか消えていることに気が付いた。
楽し気に青年と話すホソクも、出発前よりずっといい表情をしていて、安堵が広がる。
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はちうん(プロフ) - 繭さん» ありがとうございます。意識はしているのですが、たまに変な文章を書いてしまうので、そう言っていただけると嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (2018年3月14日 16時) (レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
繭(プロフ) - コメント失礼します。はちうんさんの文風がすごく読みやすくて尊敬します!これからも頑張ってください! (2018年3月13日 13時) (レス) id: dba4d43671 (このIDを非表示/違反報告)
はちうん(プロフ) - KNさん» コメントありがとうございます、嬉しいです。これからもよろしくお願いしますね。 (2018年3月12日 7時) (レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
KN - コメント失礼します。この作品すごく好きです。毎日チェックしてます(笑)文章がとても綺麗ですね!これからも応援してます!ファイティン! (2018年3月12日 0時) (レス) id: de585078da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:U_hi | 作者ホームページ:http://id35.fm-p.jp/408/yuna3lone/
作成日時:2018年2月19日 2時