第35話 ページ35
店内は、入口のこじんまりとした感じとは異なり、広い間取りとなっていた。
通路を広くとってあり、ギターケースを背負ったままでも問題なく三人は通れそうな感じで、床も綺麗に掃除されていた。
入口の近くは楽器の整備用品などを中心に売っていて、兄はレジカウンターに居る年配の男性と何かを話しているようで、チラリと見た時に視線が合ったのでお辞儀をしておいた。
あっという間に話を終わらせたらしい兄が、説明するように口を開く。
「このお店はこの方が経営なさっていてね。楽器や整備用品はまぁ、他のチェーン店と同じような感じなんだけど、楽器ケースのセンスの良さが抜きんでているんだ。何せ、デザインをこの方が担当した一品モノばかりだから」
「なるほど……。お世話になります」
「あぁ、ゆっくりしていってね」
優しい声に促され、兄と共に店の奥にあるケースコーナーを見に行く。
ギターケースは最も種類が多く、色合いも可愛らしい物からシンプルな物、格好の良い物まで様々だった。
ここら辺が良いと思うよ、と兄に勧められるままケースを見ていく。
どれもこれも好みにどんぴしゃりで、兄と話しながら候補をゆっくり絞っていった。
最終的に、プルシャンブル―をベースにして、シアンで店のロゴと翼のあしらわれている物を選んだ。
青い系統で綺麗にまとまっていて、その二色以外にも部分的に同系統の色が使われていて、落ち着きのある物だった。
以前のケースは赤の主張の強い物だったので、選ばれたそれを見ているのは新鮮な感覚だった。
「この空いているスペースに文字を入れることもできるんだけど……“YYY”とか、どうかな」
ほら、どうせそれ付け替えるからお揃いになるでしょ、とウサギを指さしながらチャチュルが笑った。
よく弟を見ている兄だ、と思いながらお願いします、と言った。
じゃあ、会計と文字入れをお願いしてくるから、ちょっと待っててね、と言われたので頷きを返して店内を物色する。
と言っても、見るのは主にケースだ。
ユナに渡された機械で彼女が好きな曲を再生して、頭の中でギターアレンジの楽譜を作りながら、完成された作品を見て回る。
この後は仁川に行こう、でも、その前に花屋に行かないとな、と頭の中で予定を組み立てた。
ジムに黒いマスクを三箱ほど買ってきてほしいと言われていたがそれは別の日にしよう、と物事に優先順位をつけた。
この作業をしていると他に注意が全く向かないのは危ない事だ。
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はちうん(プロフ) - 繭さん» ありがとうございます。意識はしているのですが、たまに変な文章を書いてしまうので、そう言っていただけると嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (2018年3月14日 16時) (レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
繭(プロフ) - コメント失礼します。はちうんさんの文風がすごく読みやすくて尊敬します!これからも頑張ってください! (2018年3月13日 13時) (レス) id: dba4d43671 (このIDを非表示/違反報告)
はちうん(プロフ) - KNさん» コメントありがとうございます、嬉しいです。これからもよろしくお願いしますね。 (2018年3月12日 7時) (レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
KN - コメント失礼します。この作品すごく好きです。毎日チェックしてます(笑)文章がとても綺麗ですね!これからも応援してます!ファイティン! (2018年3月12日 0時) (レス) id: de585078da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:U_hi | 作者ホームページ:http://id35.fm-p.jp/408/yuna3lone/
作成日時:2018年2月19日 2時