第33話 ページ33
A、今日は暇かな、と訊ねてくる長兄に、はい、と返事をしながら頷けば、じゃあ今日は一緒に出掛けようか、と楽しそうな雰囲気の彼に手を引かれた。
「何処へ行くんですか?」
「ソウルだよ。可愛いマンネにマテョンがプレゼントを買ってあげる」
「クリスマスプレゼントは貰いましたよ?」
「目標に向かって頑張る弟への応援だよ。そのギターケース、貰い物だったから結構古くなっちゃってるよね」
そう言って、部屋に置いてあるケースを指で示された。
確かに、このギターケースはチャチュルの友人に譲ってもらったもので、新品ではなかった。
二人の人間に使われたことにより、所々傷もできてしまっていたが、機能を落とすほど深刻な物ではなく、Aはあまり気にしていなかったが、兄はそうではないようだった。
「それに、誕生日にガンウからソフトケースを貰ったんだよね? 俺にも買わせてよ。不平等だからさ」
「……わかりました。ありがとうございます」
「最初にケースを買って、そのあと三時間くらい、近くで時間を潰しててほしいんだ。会社の面接が入ってて」
「どこの会社を受けているんですか?」
「んー……内定したら教えるよ。どこの楽器屋さんがいいかなぁ」
ブツブツとお店の候補を呟きながら、長兄は先にAの部屋を出た。
何処の会社を受けるのか気になったが、これでは教えてもらえそうにない。
兄が隠したい物を暴きたい、という感情は無い為、仕方ないか、と諦めて出かける準備に取り掛かった。
この間着ることのなかった、ユナが選んだ冬用の服を広げて着替えた。
スッキリとしたシャツに、ベスト、細身のダメージジーンズ。
コート掛けから生地の厚すぎないコートを取って上に羽織れば着替えは完了した。
ギターケースにギターを仕舞って、コートに携帯とあの音楽再生機器を突っ込んだ。
あの日、家に帰ってから端末を充電して、電源を付けてみれば四桁のパスワードが設定されていたそれに、ダメもとで1230と彼女の誕生日を打ち込んだ。
弾かれてしまって咄嗟に打ち込んだ1024の四桁で、意外にもロックは解除されて、音楽の他には初期のアプリとユナが撮った写真しかない端末が解放された。
彼女が入れていた曲に加えるようにして、新しい曲を入れた。
買っていた系統が偏っていたので、おススメと表示されたそれを選ぶだけでよかった。
彼らの曲は、まだユナが好きだったもの、という認識しかなかった。
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はちうん(プロフ) - 繭さん» ありがとうございます。意識はしているのですが、たまに変な文章を書いてしまうので、そう言っていただけると嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (2018年3月14日 16時) (レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
繭(プロフ) - コメント失礼します。はちうんさんの文風がすごく読みやすくて尊敬します!これからも頑張ってください! (2018年3月13日 13時) (レス) id: dba4d43671 (このIDを非表示/違反報告)
はちうん(プロフ) - KNさん» コメントありがとうございます、嬉しいです。これからもよろしくお願いしますね。 (2018年3月12日 7時) (レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
KN - コメント失礼します。この作品すごく好きです。毎日チェックしてます(笑)文章がとても綺麗ですね!これからも応援してます!ファイティン! (2018年3月12日 0時) (レス) id: de585078da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:U_hi | 作者ホームページ:http://id35.fm-p.jp/408/yuna3lone/
作成日時:2018年2月19日 2時