第１９話 ページ19
安山にある実家に着いたのはちょうど夕食のころ合いで、母とガンウは既に家に居るという事だった。
空港のある仁川から安山まで、移動には二時間ほどしかかかっていないのに、やはり実家は別格で、帰って来たのだと実感が広がっていく。
「半年ぶりの実家だから緊張してる？ やー、可愛い奴め」
「そんなんじゃないですよ、チャチュリヒョンニム……」
運転は任せても車庫入れは任せなかった父が車をしまいに行っている間にトランクから下ろした申し訳程度の荷物を持って玄関を見つめていれば、隣に立った長兄がぐしゃぐしゃとAの髪を撫でた。
「この後、ガンウヒョンニムと一緒に写真撮りたいので、ほどほどにしてくださいよ？」
「これで撮るの？ ヒョンニムは大人だから問題ないけど、ガンウはたぶんAより幼く見えるなぁ……逆転だね」
「ガンウヒョンニムは眼鏡かけてるから十分大人っぽいですよ」
「俺からしたら二人ともまだまだ可愛い弟たちだけどね。そういえば、ガンウはまたA用に伊達メガネ買ってたよ」
そう言いながら、こういうやつ、とジェスチャーで示して見せる。
ガンウは眼鏡をかけたAは自分似だと明言しており、事あるごとに気に入った伊達メガネをプレゼントとして渡してくる。
タイムカプセルアプリを自身の将来の兵役に備えてちょちょいと作れてしまう彼にはその手の事業(？)に才能があって、兄弟の中で一番稼ぎ出すのが早かったからそんな妙な散財癖があっても誰にも咎められない。
「なんだ、まだ入ってなかったのか。早く入ろう。父さん若くないから寒いよ」
「あぁ、それは……」
謝罪をしながらチャチュルが玄関の扉を開けた。
アメリカのアパートには作らなかった靴置き場。
久しぶりの感覚に懐かしさを感じながら方結びにしてしまっていた靴ひもをほどいた。
柔らかい皮生地を用いた少し高そうなこの靴は、定期的に開かれるパーティーのために用立てたものだ。
早々と靴を脱いで去って行った父と違い、靴を脱ぎ終えて尚弟に構うチャチュルは、良い靴だね、と感想を告げた。
と、バタバタと騒がしい音が二階から聞こえて来た。
感覚的に覚えている、これは階段を駆け下りる音だ。
この時間帯に二階の自室に籠っている余裕がある人など消去法で次兄のみだ。
「……A！ 帰ってたのか。ヒョンニムに連絡入れろよ、待ってたんだぞ」
眼鏡をかけた母さん似の天才兄貴、ガンウが緩く口角を上げた笑みを浮かべた。
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はちうん(プロフ) - 繭さん» ありがとうございます。意識はしているのですが、たまに変な文章を書いてしまうので、そう言っていただけると嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (2018年3月14日 16時) (
レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
繭(プロフ) - コメント失礼します。はちうんさんの文風がすごく読みやすくて尊敬します！これからも頑張ってください！ (2018年3月13日 13時) (レス) id: dba4d43671 (このIDを非表示/違反報告)
はちうん(プロフ) - KNさん» コメントありがとうございます、嬉しいです。これからもよろしくお願いしますね。 (2018年3月12日 7時) (レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
KN - コメント失礼します。この作品すごく好きです。毎日チェックしてます(笑)文章がとても綺麗ですね!これからも応援してます!ファイティン! (2018年3月12日 0時) (レス) id: de585078da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：U_hi | 作者ホームページ：http://id35.fm-p.jp/408/yuna3lone/
作成日時：2018年2月19日 2時
