第１１話 ページ11
『最後に、Aの誕生日にこの動画を届けてくれるであろうアプリを作ってくれたガンウオッパに心からの感謝を。たとえその作製理由がAへの愛だけで構成されていたとしても、今私がこうしてメッセージを送れるのはガンウオッパのおかげです。本当に』
俺の初商品、と自慢げに紹介して来た兄の姿が頭に浮かんだ。
タイムカプセルアプリ、なんて妙な物を発明したと思うけれど、今思うと指定した年、月、日、時間まで細かく決めてメッセージや動画を送れるこのアプリがあってこその、今この瞬間だと思うと兄には本当に頭が上がらない。
もちろん、ガンウヒョンニムだってこんな事態を想像してはいなかったと思うが。
『……お父さん、お母さん、私を生んでくれて、今まで育ててくれて、本当にありがとうございます。最高に優秀な娘にはなれなかったし、むしろダメな娘の要素が多かったのに、見捨てないでくれて、愛してくれて、感謝でいっぱいです。……Aから着信。家に着いたみたい』
ユナは困ったような表情で画面を見つめた。
今ユナに電話をかけている自分はまだ、彼女たちの状況をしっかり把握していない。
事故があったという話だけを知っていて、小さな事故ならそろそろ終結しているだろうなどと呑気な考えを持っていた。
彼女からの折り返し電話に出て初めて状況を察したのだ。
伝えなければ、とそう思っていたのだろうか。
もしもAが鈍くて、若しくは現実と向き合えなかったら、ユナは自分の口から自身の運命を伝えるつもりだったのだろうか。
画面をジッと見つめるユナの表情から、そんな苦悩が伝わってくるようだった。
しばらくして、電子音が途絶えた。
あちらのAが諦めたのだろう。
『……私、ちゃんとAに言えるかな？ なんて言えばいいのかなぁ。私が好きだって、愛してるって言ったら、A、私の事忘れられなくなっちゃう？ でも……。どうしたらいいんだろうね。私、バカだから全然、わかんないや……』
ポロポロと涙を流して、それを乱雑に拭って、最後にもう一度誕生日おめでとう、と告げてユナは動画を切った。
ストン、と彼女の言葉が胸に落ちて来た。
一生は傍に居られない。
だから、愛しているけど、ごめんね。
許して、はAの未来を縛る愛の言葉を口にした事に対して。
意味を理解すればするほど、やっぱり彼女が愛おしく、前に進もうとする足は押し留められた。
変われないままで、冬の寒さが近づいて来た。
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はちうん(プロフ) - 繭さん» ありがとうございます。意識はしているのですが、たまに変な文章を書いてしまうので、そう言っていただけると嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (2018年3月14日 16時) (
レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
繭(プロフ) - コメント失礼します。はちうんさんの文風がすごく読みやすくて尊敬します！これからも頑張ってください！ (2018年3月13日 13時) (レス) id: dba4d43671 (このIDを非表示/違反報告)
はちうん(プロフ) - KNさん» コメントありがとうございます、嬉しいです。これからもよろしくお願いしますね。 (2018年3月12日 7時) (レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
KN - コメント失礼します。この作品すごく好きです。毎日チェックしてます(笑)文章がとても綺麗ですね!これからも応援してます!ファイティン! (2018年3月12日 0時) (レス) id: de585078da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：U_hi | 作者ホームページ：http://id35.fm-p.jp/408/yuna3lone/
作成日時：2018年2月19日 2時
