第2話 ページ2
自分より一つ年上の彼女は、あの国から飛び出して自由の国に来た自分とは違い、まだあの国で手探りに未来を探しているのだから。
この国が何もかも完璧というわけではないけれど、それでも押しつぶされそうになるプレッシャーが何処からか湧いてくるアジア圏よりは少し生きやすい気がする。
あの国や日本の何がダメで、何が学生たちを不安にして死へと掻き立てるのかは分からない。
でも、確かに何がダメなんだろう。
そうでなければ学生の死因があんな悲しい結果になるはずがないのだ。
不安で泣いていたりはしないだろうか、と今の自分では彼女に触れてあげる事すらかなわないが、思わずにはいられない。
あの時、母と兄たちとあの国に残らず父についてこの国に来てしまった判断が本当に正しかったのかどうか、Aには分からなかった。
自分はきっと怖かった。
学ぶ機会だ、世界を知りたい、だの理由を並べて逃げたかっただけだ。
泥沼にはまる思考をブルブルと振り払った。
彼女から届いたメッセージを読んで、添付された写真を見れば少しは気分がマシになる。
これは昨日の夜に届いたもので、修学旅行の報告だった。
「船に乗ったよ〜。こんな大きい船初めて。Aの学校も修学旅行あるのかな?」
友達とハートを作りながら撮ったらしい写真に可愛いと返信して、そこから数回なんてことの無いメッセージのやり取りをした。
デビュー当時から応援しているグループのファンクラブに入って、この間創立式に参加したという話を聞いて。
また連絡するね、と切れたメッセージ。
見返して元気を貰ってから午後の授業に望んだ。
放課後は友人と近くの公園でバスケをした。
国の中では小さい方には入らないAだったが、友人達とは体格に差があるのでちょこまかと動いてみるが、やはり足手まといなようだった。
残念だ、と深刻な表情で言えば彼らは爆笑で返した。
中学の頃と変わらない、いい友人達を得たと実感した。
ヘトヘトになるまで動いて、また明日と手を振って別れた。
暗い道を自転車で走って、信号待ちをしている時に着信に気づいた。
「ユナ? 修学旅行中じゃなかった?」
『……A、うん。なんか、事故があったみたいで。不安だから連絡しちゃった。時間大丈夫?』
「普段ヌナに寂しい思いをさせちゃってるから、そんな事気にしないで。こっちはまだ夕方だし」
『そっか。良かった……じゃあ、もう少し話そう?』
「もちろん」
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はちうん(プロフ) - 繭さん» ありがとうございます。意識はしているのですが、たまに変な文章を書いてしまうので、そう言っていただけると嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (2018年3月14日 16時) (レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
繭(プロフ) - コメント失礼します。はちうんさんの文風がすごく読みやすくて尊敬します!これからも頑張ってください! (2018年3月13日 13時) (レス) id: dba4d43671 (このIDを非表示/違反報告)
はちうん(プロフ) - KNさん» コメントありがとうございます、嬉しいです。これからもよろしくお願いしますね。 (2018年3月12日 7時) (レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
KN - コメント失礼します。この作品すごく好きです。毎日チェックしてます(笑)文章がとても綺麗ですね!これからも応援してます!ファイティン! (2018年3月12日 0時) (レス) id: de585078da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:U_hi | 作者ホームページ:http://id35.fm-p.jp/408/yuna3lone/
作成日時:2018年2月19日 2時