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第40話 ページ40

古いケースからギターを取り出し、兄に買ってもらったケースに入れ替える。

忘れずにウサギを外して付け替えた。

ウサギのシャツに書かれた白抜きの“YYY”の文字と、ギターケースにライトブルーで書かれた“YYY”の文字が収まりよく並んでいて思わず笑みが零れた。

彼女の影を常に近くに置いていたけれど、それを自分から取り入れてみようと思ったのは初めてだった。


――Parting cannot be avoided.

別れは避けることができない。


だから俺たちは、別れに対する感覚が麻痺しがちだとよく言われている。

そんなことを言われても俺はユナを忘れることは出来ないけれど、それでも……。


「あなたを想って泣くことはあっても、それは決して俺の枷にはならないでしょう」


彼女が遺した遺志は、きっとこれからの俺の作品に大きく関わってくる。

それを心苦しくは思わない。

ユナから貰った物を最大限に活かしていけば、きっとそれが彼女の代わりに世界に生き続ける。



兄と別れた後、電車に乗り込んで窓の外の景色を見ながらそんなことを考えていた。

ソウルから目的地である仁川までは電車で一時間ほどの距離だ。

考え事をするにはちょうど良い。

街中で買った花が、傷むことがないように配慮をしながらぼんやりと電車に揺られる。


空港に着いた時ほど派手な格好をしたつもりはなかったが、今日も少しだけ視線が痒いように感じた。

ギターケースを持っているから悪目立ちしてしまっているのかもしれない。

マスクと前髪でできるだけ周りの関心をシャットアウトして演奏予定の曲を聴く。

仁川港で、人気の少ない場所を選んで花を海に手向けながら演奏をしていれば、流石に声を掛けてくるような無神経な者はいないはずだったが、少しだけ不安になった。

記憶は風化する。

関係者には深く、どうしようもない傷跡を残しながら、まったく関わりのなかった人間にとっては聞けば思い出す程度の物になってしまっているのかもしれない。

その可能性は否定できるものではなかった。


『ユナを殺したのはな、君じゃない。社会だよ。……今の社会が、あんな事故を生んでしまったんだ』


ユナの父親の言葉が思い出された。

社会が変わらなければ、誰かが現状を変えようとしなければ、自分たちは同じことを繰り返す。


「――守るだけじゃ意味がない。わかってる……必要なのは、変革だ。それを成すだけの力を与える事だ」


途方もない、けれど、踏み出さなければならない未来。

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はちうん(プロフ) - 繭さん» ありがとうございます。意識はしているのですが、たまに変な文章を書いてしまうので、そう言っていただけると嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (2018年3月14日 16時) (レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼します。はちうんさんの文風がすごく読みやすくて尊敬します!これからも頑張ってください! (2018年3月13日 13時) (レス) id: dba4d43671 (このIDを非表示/違反報告)
はちうん(プロフ) - KNさん» コメントありがとうございます、嬉しいです。これからもよろしくお願いしますね。 (2018年3月12日 7時) (レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
KN - コメント失礼します。この作品すごく好きです。毎日チェックしてます(笑)文章がとても綺麗ですね!これからも応援してます!ファイティン! (2018年3月12日 0時) (レス) id: de585078da (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:U_hi | 作者ホームページ:http://id35.fm-p.jp/408/yuna3lone/  
作成日時:2018年2月19日 2時

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