影 ページ31
座ったまま呆れたような兄者の横顔を見つめていると、それまで黙っていた弟者がガタンと大きな音を立てて立ち上がった。
「兄者、そんな言い方ないだろ！Aは頑張ってもっと綺麗になろうとしてんのにっ……」
弟者が反抗したのが気に入らなかったのか、兄者は睨みを強くする。
すぐに嘲笑うように口角をあげて、不機嫌モード全開になった。
「はっ、このちんちくりんが？綺麗になりてえならまず短気な性格から直すべきだな。金の無駄だ」
「Aが何にお金を使おうと兄者には関係ないだろ！？そういう兄者だって、Aにいくら借りてると思ってんだよ！」
「俺がいつこんな餓鬼に金借りたってんだ」
今問題なのはお金じゃない。
そんなことどうでもいいのに弟者ははっきりさせたかったようだ。
兄者の言い分に我慢ができなくなって、ついに弟者は言った。
「……じゃあ、言わせてもらうけど。兄者が酔っぱらったとき、お金の精算は誰がした？一人で飲みまくって潰れて介抱してくれたのは？そのとき必ず水を用意してくれたのは誰だよ！！」
兄者は目を見開いてた。
そりゃ、そうだろう。
飲み代を私が払っていたなんて本人は知らないんだから。
酔い潰れたときの記憶は曖昧だから弟者か自分自身が払っていると思っていただろうし、介抱だって弟者がいないときは私が全部していたなんて覚えていないだろう。
「……Aは兄者の財布から勝手に取って払ったりなんてしなかった。俺が代わりに返すって言ってもあとで本人に払わせるからって絶対受け取らなかった。……けど、兄者はお礼の一言も言わなかった」
兄者が飲んだ分でも勝手に財布から取り出すのはなんだか気が引けた。
弟者は悪くないから払わせるわけにもいかないって思っただけで。
私はなにも正しいことをしているわけじゃない。
どうするのが正解かなんて私にもわからなかったから。
だから弟者に兄者には言わないでって口止めしてた。
自分でちゃんと言うからって。
でも会うたびに喧嘩になって、お金どころかお礼も言ってもらえなくて。
別にお礼が欲しくてやってるわけじゃない。
けれど、少しくらい感謝して欲しいと思ってしまうのはやはり悪いことなのだろうか。
ありがとうの一言が欲しいと思ってしまうのは貪欲なのだろうか。
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SHIMUKA(プロフ) - yonechanさん» コメントありがとうございます。作者の酷い妄想ですが、楽しんでいただけて良かったです！笑これからも色々なお話を書けるように頑張ります！ (2019年1月27日 17時) (
レス) id: d814653b72 (このIDを非表示/違反報告)
SHIMUKA(プロフ) - はくや。さん» コメントありがとうございます。遠ざけるためと書きましたが、テーマとしては好きな子ほどいじめたくなるお兄様を書きました笑これからも応援よろしくお願いします！ (2019年1月27日 17時) (レス) id: d814653b72 (このIDを非表示/違反報告)
yonechan(プロフ) - 初コメ失礼します。完結おめでとうございます！内容が素敵でドキドキしながら、毎日の更新を楽しみに見ていました☆完結がちょっぴり寂しいくらいです。次回作も楽しみにしてます！ (2019年1月27日 16時) (レス) id: 183516cb24 (このIDを非表示/違反報告)
はくや。(プロフ) - 初コメ失礼します！完結おめでとうございます！とても素敵で入り込んで読んでしまいました！無事お互いの気持ちが伝わって良かったです！これからも素敵な小説お待ちしております！ (2019年1月27日 15時) (レス) id: 96ac7b0fa3 (このIDを非表示/違反報告)
SHIMUKA(プロフ) - 豆さん» コメントありがとうございます。読者の皆様が楽しめる物語を心がけておりますが、改めて感想をいただけるのは本当に嬉しいです！！これからも応援よろしくお願いします！ (2019年1月22日 8時) (レス) id: d814653b72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：SHIMUKA | 作成日時：2019年1月4日 15時
