地位と 名誉と オカネと…【緑】

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「ヤスくん、ここって…」


「うん？どこ？」


「これ。こうでいいの？」


「あ〜っ、それはぁ…」


お互いの“カベ”が無くなったあの日から、私は安田さんのことを“ヤスくん”と呼ぶようになり



「Aちゃん、アカンッ。やっぱ俺 できひんっ」


「うわっ、ヤスくん 焦げてるっ」


「やってぇ、上手く ひっくり返されへんもん」


ヤスくんは、私のことを“Aちゃん”と呼ぶようになった。もちろん、眼鏡もナシ




マルちゃんとの、毎週土曜日の勉強会にも顔を出すようになって

“俺も やってみる”

チャレンジ精神旺盛なのは、良いことなのだけど



「ヤスくん、ホント 料理だけはダメ だよね」


「うぅ〜っ」


「章ちゃん、これでも頑張ってんねんで？たまにウチ来て“料理 教えて〜”って…」


「マルっ、それ 言わん約束やろっ」


「そうそう。俺んとこにも“簡単に作れる料理って 何？”言うてな…」


「横ちょ、黙っとって！」


「……にしては、全く上達せぇへんやんけ」


「信ちゃん、そない 言わんくても……」


「あ〜ぁ、ヤスくん 拗ねちゃったじゃん。どーすんのっ？」


「ヤスっ、ごめんなっ？」


「章ちゃんなら、すぐ 出来るようになるって」


「せやせや、“継続は力なり”やっ」






みんなが慰めにいってるのに、なかなか機嫌がなおらない


「ねぇ、そろそろご飯にしない？ヤスくんのだし巻き卵、ちょっと焦げちゃったけど、美味しいよ？」


「ホンマに？」


「うん。端っこ 味見したけど、美味しかった」


「ふふっ。Aちゃんに 褒められたっ♪」


コロリと機嫌がよくなった、ヤスくん

箸や食器をテーブルに運んでくれる



「なんや知らんけど、お前が一番、ヤスの扱い上手なってんなぁ」


「そんな事ないって。でも、ヤスくんと こんな風になれたのは信ちゃんのおかげだよ。感謝してます」


「まっ、これでAも、ホンマもんの仲間ってことや」


「………うん」





5人でテーブルを囲み

「ほな、いただきますか？」


いつも“いただきます”の音頭を取るのは 裕くん

みんながパラパラと手を合わせ始めたところで



「あのっ、ね？ひとつ 聞きたいことがあるの」

最近、ずっと気になっていたこと



「もうすぐ、一年 じゃない？」


聞いてみようと思った

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