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あの日、私はずっと泣き続けて、友だちは一晩中私のそばにいてくれた。
たぶん1人で部屋にいたら、苦しくて辛くてボロボロになっていたと思う。でも優しくて素敵な友だちのおかげで、私の心は少し明るくなっていた。
彼女を見送るとき、何度も何度も感謝を伝えた。彼女は心配そうに笑って、「私はいつでもAの味方だから!」と勇気づけてくれた。
その日から、たくさん考えた。蛍のこと、蛍と私の過去、今、未来。そして私の幸せのこと。
考えて考えて泣いて考えて、気づいた。
私は蛍に今の自分の気持ちをちゃんと伝えてないし、今の蛍の気持ちを聞いていない。
私の気持ちをちゃんと伝えたら、蛍ともう一度向き合えるかもしれない。蛍の気持ちを知ったら、私も寄り添うことができるかもしれない。
うじうじするのはやめよう。ちゃんと蛍と話そう。
蛍とのトーク画面を開く。一昨日私が送ったラインにはまだ既読がついていない。
《どうしても話したいことがあるの。電話したい》
さっき心に決めたことなのに、目の前に蛍がいなくても怖気づいてしまう。手が震えて送信ボタンが押せない。
...だめだ。友だちも背中を押してくれたのに、私はうじうじしてるだけ。
思い切って送信ボタンを押した。
《ごめん。しばらく忙しい》
だけど、返ってきた返事は思っていたより冷たかった。
プツンと何かが切れて、涙が自然と溢れ出していた。
蛍は私ももう話したくないのかな。私のこと好きじゃないのかな。私は蛍とこのまま付き合っていて、幸せだと思えるのかな。
「......もう、いいか」
好きはあなたにあげたけど、人生まではあげられない。
右手薬指のペアリングを外した。
愛されないって泣くのは、もう終わり。
《明後日、仙台に帰る。30分でいいから、会って私の話を聞いてほしい。これで最後のわがままにするから。》
送ったラインにはすぐ既読がついたが、返事が来たのは3時間後。
《わかった。昼はバイトだから、20時にいつもの公園で会お》
蛍からの返事を見て、明後日の朝に仙台へ出発するバスと、明後日の夜に仙台から帰ってくるバスを予約した。
まだ、涙は止まらなかった。
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作者名:いおり | 作成日時:2021年9月23日 23時