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久しぶりの宮城はやっぱり寒い。重い足取りで戻ってきた実家だったけど、久しぶりにお母さんのごはんを食べれたし、弟とトランプしたし、散歩していたら仁花ちゃんに会えたし、私の心は少しずつ軽くなっていた。
今日は蛍とデート。最後に会ったクリスマスから2ヶ月弱経っている。
3日前の朝送った「木曜のデートどうする?」というラインに対する返事は、「迎えに行くからAは家で待ってて。行きたいところ探しといて。」と2日前に返ってきた。
返事が来るまで、デートの約束は自分の勘違いだったのかと不安になっていたが、蛍の迎えに行くという単語で見事に吹っ飛んだ。私は単純だ。
「よし」
新しいワンピースも、練習したヘアアレンジも、完璧。やっぱりの蛍の前ではかわいくいたいから。
チラッとスマホの画面を見ると、あと10分で着く、と蛍からラインが来ていた。残りの準備を済ませ、家の前で待っていよう。
「おはよう」
「おはよう!ひさしぶりだね、迎えに来てくれてありがとう」
「そうだね、そっち乗っていいよ」
助手席のドアを開けて、車に乗り込む。車という空間とひさしぶりの蛍に緊張して、心臓がうるさい。
蛍が夏休みに免許を取ってから何度かドライブデートをしていたが、前より運転が上手になっていた。
「運転よくするの?」
「まあ練習がてらね。Aも教習行ってるんでしょ」
「すごいねー私はやっと1段階終わったところだよ」
「まだまだだね」
蛍は優しく笑う。その横顔に安心した。
遠距離恋愛は難しい。会えないから不安になってしまってただけ。大丈夫。なんて自分に言い聞かせた。
車を1時間ほど走らせて、山の中にある小さなカフェに着いた。
お互いオムライスを頼んで、美味しいねって笑う。今まで通りの楽しいデートにほっとしながらも、やっぱり会えなかった間の蛍が引っかかっていた。
「散歩でもする?」
カフェを出た後、蛍の一言に大きく頷いた。
山の中だったけど道は綺麗に整備されていた。木々は光を浴びてキラキラしていて、鳥のさえずりも心地良かった。
ただ私の心のざわざわは収まらなかった。隣を歩く蛍との距離が、前に会ったときより離れた気がしたから。
「ねえ蛍!手繋ぎたい」
「......ん、」
「ふふ、ありがとう」
今までなら何も言わずに繋げていたのに。
なんて、だめだ。蛍とデート中なんだから。
嫌な考えを振り払い、蛍の手をぎゅっと握った。
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作者名:いおり | 作成日時:2021年9月23日 23時