天竺の負け ページ44
「…ったくよ。下僕のクセに手がかかる……体が勝手に動いちまった………」
「イザナ……」
稀咲を使って私とエマを狙って、エマをあんな目に合わせた張本人。
さっきまでマイキーを灰にすると言っていた。
たぶん、そうさせたのはイザナに取りついた呪いだ。
家族に手を出すなんて、最低な兄だと思った。
それでも、イザナにも誰かを思う気持ちが残っていた。
「……傑っ!…傑ぅ!?来てるんでしょ!?どこに……っ!!?」
叫びながら辺りを見回すと後ろから口を塞がれた。
「落ち着け、A。あいつは来てねぇ。俺がここまで乗せて貰った呪霊は確かに傑に借りたヤツだがそれだけだ」
ピタッと動きを止めた私を見て悟が私の口元から手を離した。
「そんなっ……」
高専に帰って硝子にっ……!
早く手当てしないとイザナが………!
「お願い!悟!!あんなヤツでも私の……!私たちの兄なの!!せめて早く祓わなきゃ……!!」
ぎゅっと悟の服を掴んですがる。
少し考えた悟が私の思いの強さを見て諦めたように息を吐いた。
「………分かった。とりあえず、近くまで行こう」
「マイキー、A、……オマエらに話しておきたいことがある」
私とマイキーの姿を視界に捉えたイザナが苦しそうに息を乱しながら口を開く。
「天竺の負けだ」
呟かれた言葉に隣で倒れている鶴蝶が反応する。
「ふざけんなっ。俺が言うのはいい。オマエがそれを言うな!」
「ハハ、何だよソレ。…ワケ分かんねぇ野郎だな…」
「イザナ…何でオレなんか庇った!?オマエは王だ。オレをゴミのように捨てでもオマエの時代を創らなきゃいけないんだ!!」
「………“オレら”の時代…だよ」
「…え?」
「ゴメンな。鶴蝶。…でもオレにはオマエしかいないから」
呟いたイザナがまたマイキーを見る。
「マイキー…オマエはオレを“救いたい”って言ったか?」
「兄弟なら当然だ…。もう喋るなイザナ…」
「……ある日、オレを捨てた母親と…偶然会った。動揺したよ」
そして、イザナは語った。
私やマイキーとは母親だけじゃなくて父親も違うこと。
そして、エマとは母親すら違うこと。
139人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月見(プロフ) - 夜空ゆーたおさん» 楽しみに待っていてくださって、ありがとうございます(*^^*)先ほど1話更新しました! (2023年3月26日 8時) (レス) id: 9508b2817a (このIDを非表示/違反報告)
夜空ゆーたお(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2023年3月25日 2時) (レス) @page22 id: d76bc8bfcd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月見 | 作成日時:2023年2月1日 20時