大丈夫じゃない ページ32
医者の話を聞いてから考えていたことがある。
未来予測を使えば、エマがどうなるか分かるかもしれない。
けれど、それには莫大な呪力を消費する。
今の私は7〜10日後の未来を覗けば、その日使える呪力を一瞬で消費する。
任務がいつ入るか分からない。
毎日、明日こそはエマが目覚めると信じながら覗くしかないのだろう。
「……まただ。……今度はエマが目覚めないかもなんて………何でまたこんなことに………」
「え、……A?」
「なに…」
硝子の問いかけに彼女の顔を見ることなく答える。
「またって?今度はエマがって、……前にもこんなことあったの?」
「え…?」
確かに私は“また”って………
何で私はそんなことを思ったの?
考えるとズキッと頭が痛む。
「うっ…」
この痛みは頭を打った所に絶望的な現実を突き付けられたせいだ。
「大丈夫かい?」
傑がしゃがみ込んで問いかけてくる。
「ハハハッ……大丈夫じゃないかも。何しろ変なこと口走るぐらいだからね。………硝子、検査も終わったし、反転術式お願いしていい?」
「それはいいけど…」
「ん。じゃあ、お願い」
それを合図に硝子が私に手を翳す。
暫くすると今まで鈍く感じていた痛みがスゥゥッと引いた。
「硝子、ありがと。………そう言えば悟は?」
キョロキョロと見回しても、目立つ白髪が見当たらない。
「Aが先生の話聞いてる間に任務に出たよ」
言われて窓の外を見る。
もうすっかり日が暮れていた。
「そっか……。硝子も傑も暗いし帰って。今日は本当にありがとね」
「本当に大丈夫かい?」
「うん。大丈夫」
じゃない。
エマがこんなことになって正直しんどい。
エマがもう目を覚まさないかもって、不安がずっと私の心に渦巻いている。
「明日には高専に戻るから、正道によろしく言っといて」
精一杯笑って二人を見送った。
それと入れ違うようにタケミっちが弟に肩を貸しながら戻って来る。
弟は顔に傷を作っていた。
「マイキー?何があったの?」
聞いてもマイキーはぼーっとしたままだ。
「ドラケンくんに殴られたんっスよ」
代わりに答えてくれたタケミっちも顔に新しい傷を作っていた。
「ドラケンが………」
きっと“側に居たのに何で守れなかったのか”問いただしたんだろう。
「殴るなら、私を殴ってよね…」
だって、あの時エマの一番近くにいたのは私だから。
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月見(プロフ) - 夜空ゆーたおさん» 楽しみに待っていてくださって、ありがとうございます(*^^*)先ほど1話更新しました! (2023年3月26日 8時) (レス) id: 9508b2817a (このIDを非表示/違反報告)
夜空ゆーたお(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2023年3月25日 2時) (レス) @page22 id: d76bc8bfcd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2023年2月1日 20時