直人の語り ページ6
「アンタ、タケミっちを逮捕した刑事よね?」
警戒しながら尋ねると、相手が余裕の表情で頷く。
「はい。いかにも」
まさか前の時みたいに仲間の刑事が隠れてるとか?
けれど、ここは私がオーナーを勤めている店の屋上だ。
彼が客として来たとしても、部外者が簡単に来られる場所じゃない。
じゃあ、もうこの店は包囲されてるとか?
それにしては何時も通りの喧騒が聞こえてくる。
「確か、タケミっちがアンタのこと“ナオト”って呼んでたけど、タケミっちとどういう関係?」
尋ねると、少し困った様な表情を浮かべる。
「………そうですね。同じ目的を持った仲間みたいな関係ですが、この世界での僕たちは中学以来会っておらず、全く親しくなかったようです」
「は………?」
何言ってんの、コイツ?
この世界では親しくなかった?
この世界って何よ。
それに、じゃあ何でタケミっちはあの時、アンタのこと嬉しそうに呼んだのよ?
「佐野Aさんですね?」
「………、だったら何?」
「僕は今日、刑事としてではなく姉を殺された弟の“橘直人”としてここに来ました」
「私の目の前でタケミっちを逮捕しておいて、それを信じろって言うの?」
大体、アンタが刑事ってことに変わりないじゃない。
「貴女は普通の人々には見えないモノが見える。そしてそれを祓うことが出きる呪術師だそうですね」
その言葉に目を見開く。
「…タケミっちから聞いたの?」
もし、コイツが私のことを言いふらしていて、それが高専関係者や上層部の耳に届いたら………
必死に隠れて来た私の居場所がバレてしまう。
「貴女の術式とやらもお聞きしました」
直人が私に近く。
「貴女にお話があります」
真剣な眼差しの直人がジッと私を力強く見つめる。
「話し?」
「はい。僕らの力になって欲しいんです」
思いもよらない一言に一瞬言葉に詰まる。
「………。アンタ、誰に助けになれって言ってるか分かってる?私は反社の人間よ?」
「分かっています。それに、その点に関しては問題ありません。元々、千冬くんや一虎くんとも協力していましたし」
いや、問題大有りよ。
それにタケミっちが逮捕されたあの時、一虎を裏切ったようなものだし!
「今からお話しすることは、僕とタケミチくんだけの秘密だったんですけど…」
「まだ協力するとは言ってないけど!?」
急に語り始めた直人の話を、私はその場の流れで聞くことになってしまった。
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作者名:月見 | 作成日時:2022年11月8日 22時