守るために ページ48
柚葉が「離して」と呟いて、私と悟を弱い力で押し退けた。
一瞬躊躇ったけど、私たちは強く止めることはせず、柚葉のやりたいようにさせる。
すると、柚葉が落ちていた八戒の小刀を拾った。
「邪魔すんな花垣。八戒はアタシが守る」
ハァハァと息を乱して、大寿に殴られて焦点も合っていない状態なのに、フラフラと立ち向かおうとする。
柚葉はいつ倒れてもおかしくない。
側で支えようと一歩踏み出すと、誰かが私の肩を優しく押さえた。
振り返って「えっ!?」と驚く私に、ニッと笑うと真っ直ぐ柚葉の元に向かう。
「私が………八戒を……守るんだ」
譫言のように呟く柚葉の持っていた小刀の刃先をソイツはガッと掴んだ。
「守る時に使うモンじゃねぇよ、ソレ」
「三ツ谷くん!?」とタケミっちが驚いた声を上げる。
隆が来たのは偶然のようだ。
「手ぇ離せよ柚葉。オレの手が切れちまう」
そう言って笑いかけた隆の笑顔で優しげで、でも痛みを滲ませた様な顔だった。
「三ツ谷…なんでココに…?」
そう尋ねた後、安心したのか柚葉の体がフラ付く。
スッと隆に支えられると彼女はそのまま気を失った。
「タケミっち、A、悟。柚葉を頼む」
振り向いた隆の言葉に、近くにいたタケミっちがそっと柚葉を預かった。
「さて、オレが相手だクソヤロー!」
怒りの籠った隆の声を聞きながら、私たち3人は柚葉を長椅子に寝かせる。
「柚葉、気を失ってるだけならいいんだけど…」
よく見ると鼻から血まで出ている。
「大寿ってヤローに顔面殴られてるからな」
「硝子に連絡して来てもらう?」
「でもアイツ、歌姫と買い出しだろ?まだ帰ってねぇかもよ?」
私と悟がそんな会話をしていると、隆と大寿の喧嘩を眺めていたタケミっちが「すげぇ…」と感嘆の声を漏らす。
「あのバケモンと互角に渡り合ってる」
「まぁ体格差はあるけど、隆は弐番隊隊長だしね」
チラリと私も隆たちを見る。
あれぐらいなら悟も戦えるだろうこれど、この戦いは時間が経てば経つほど隆に不利になるだろう。
「何ボーっとしてんだよ。タケミっち」
その声にタケミっちが「千冬!?」と驚きの声を上げる。
「えっ!?千冬も来てたの!?」
私も振り向いて声をかけると、千冬も驚いた顔をする。
「え!?Aさんと五条さん!?何でいるんスか!!?」
「あー、えっと、たまたま?」
「たまたま………?」
呟きながら怪しげな視線を送ってくる千冬。
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作者名:月見 | 作成日時:2022年11月8日 22時