柴大寿 ページ44
カツーンと足音を響かせて入ってきた人物に、私とタケミっちは驚く。
「天にまします我らの父よ。願わくば御名の尊まれん事をアーメン」
祈りながら怒った顔つきで入ったきたのは大寿だった。
その背中にはただならぬ呪いの気配がある。
「あいつ何者だ?」
悟が少しだけ緊張感を持って尋ねてきた。
「柴大寿、八戒の兄貴よ」
「アイツ本人も強そうだが、呪霊も強い。大きさは小ぇが準1級…いや、1級に近い呪いを連れてやがる」
「えぇっ!?」
先ほど戦ったばかりの呪いと同等かそれ以上の呪い!?
私が嘘でしょ!?と絶句していると、困惑したタケミっちが「稀咲たちは!?」と大寿に尋ねた。
「え!は…?…稀咲が来てるの!?」
稀咲と言えば、圭介を死に追いやったといっても過言ではない上に、ハロウィンの時に連れていた呪霊を祓い損ねている奴だ。
でも何でタケミっちが稀咲の心配を?
タケミっちにとっても稀咲は恨んでいる相手じゃないの!?
「テメェら、ここで何してんだ!?」
大寿が怒りを露にしながらそう言ったとき「あああぁあ!!」と叫び声が響いた。
そちらを振り向くと小刀の様なものを握った八戒が大寿に向かって駆け出している。
「待て!八戒!!」
タケミっちが制止するけれど、八戒には届かない。
「八戒!」
タケミっちは大寿の身を案じているようだけれど、本当に危ないのは八戒の方だ。
次の瞬間、大寿が片手でガッと八戒の首を掴むと体ごと持ち上げた。
途端にカランッと小刀が落ちる。
「オマエは本当にポーズばっかだな。辛ぇなぁ、八戒。またオレの期待を裏切んのかよ」
「ぐっ!」と苦しそうな声を上げる八戒に大寿が語り掛ける。
「本気なら静かに後ろから刺せ」
「あいつ、化けモン並みじゃねぇか…」
ハハハと乾いた笑いと共に悟が呟いた。
「只の一般人じゃない。黒龍の総長よ」
「はぁ?お前の知り合い不良多すぎだろ!」
「そんなこと言ったって、真にぃもマイキーも圭介もみーんなチームに入ってたんだもん。集まってくる人間も自然とそうなるわよ」
私が悟にそう返した時、「やめろ!!」とタケミっちが大寿に叫んだ。
大寿が八戒を離すと、八戒がドサッと床に尻餅を付く。
136人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月見 | 作成日時:2022年11月8日 22時