めんどくさいヤツ ページ30
「で？どこ行く？」
敷地の外を目指して歩きながら私は尋ねた。
傑に急にデートしてこいと言われたものだから、どこに行くか、私たちは何も相談していない。
「取り敢えず、傑にコレ渡された」
ピッと悟が差し出したのは、映画の割引チケットだった。
それを見て「あ」と声が漏れる。
「これエマが話してた。今流行ってるらしいよ…」
しかも、恋愛モノ。
これを二人で観てこいと？
そう言えば、傑がプロデュースしてやるとか何とか言ってたな………
にしても、悟と二人で恋愛モノを観るの？
想像すると何だか恥ずかしくなってきて、視線を外す。
「嫌なら別のモノ観るとか、他の場所に行くって選択肢もある。お前、他に行きたいとこあるか？」
悟の言葉に考えを巡らせる。
いや、まてよ。
恋愛モノの映画なら、むしろ“好き”とはどんなものか知るチャンスかも…？
「………。その映画、行こう」
言えば、意外そうに「お？」と驚く悟が私を見た。
「せっ、せっかく貰ったんだし！チ、チケットが勿体ないでしょ？」
何故か焦った私は早口で告げる。
「お、おぅ…」
「で、そのあとは？」
聞けば悟がポケットからメモを取り出す。
「美味しい店で食事…、それから買い物って書いてあるな」
傑に言われたことは全てこなそうとしてるらしい。
やっぱり、悟って変なところ素直だ。
まぁ、傑は悟のこと素直じゃないって言ってるけどね。
それを思い出すと、思わず頬が緩む。
「なに笑ってんだよ」
「んー？ただ悟にも可愛いところがあるんだなぁって思っただけ」
思ったことを素直に述べると悟が「はぁ？」と顔を歪めた。
「つーか、可愛いってなんだよ？俺は男だぞ」
「んー？うん。そうだね？」
何が気に入らないのか、不思議に思っていると悟が自信ありげに声を張り上げる。
「カッコいいの間違いだろ！」
「…は？」
カッコいい？
いや、確かに顔がいいのは認めよう。
けど……
本当にカッコいい人は、自分のことを自信ありげにそう言わないものだと思う。
前言撤回。
「アンタ、やっぱ全然可愛いくない………」
めんどくさいヤツだ。
そんなことを思いながら、悟の隣を歩いていった。
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作者名：月見 | 作成日時：2022年11月8日 22時
