悟のこと ページ23
「そうか。………それにしても、君の幼なじみの彼も浮かばれないなぁ」
「う゛…」と声を上げる。
思い出すのは、圭介が伝えてくれた言葉だった。
『オレはオマエが好きだ。幼なじみとして、一緒に稽古した仲間として、それから女としても…』
それは、あの時初めて打ち明けられたことだった。
圭介が私の事をそんな風に想っててくれてたなんて、考えたことなかったから。
何だか変な感じだったけれど、悪い気はしなかった。
どちらかというと嬉しい、と思う。
じゃあ、悟だったら?
もし、傑たちが言うように悟が私を想ってくれているんだとしたら………?
「おや?少し顔が赤いようだけれど、どうかしたかい?」
急に指摘されて、ハッとした私は何だか恥ずかしさを覚えた。
「なっ!べべべ、別に!!いいでしょ!!なんでもっ!!」
思わずムキになって答えると二人が顔を見合わせる。
「Aが明らかに同様してる」
「なるほど、悟にも可能はあるってことか」
「いや、待て傑。悟にAは勿体ない。あのクズにAは幸せに出来ない!!」
ムギュッと硝子が私を抱き締めてくる。
「硝子、気持ちは分からなくもないが、ちょっと言いすぎじゃないかい?」
複雑そうに傑が苦笑いを浮かべる。
「兎に角、Aが嫌じゃないならだけど、少しだけでいい。悟の事考えてみてやってくれ」
傑が私を真っ直ぐ見てくる。
少なくとも傑は、本心でそう言っているんだとよく分かった。
それはつまり、恋愛対象として悟を見てくれってこと?
そう思うと、今までの出来事が脳裏を駆け巡る。
初対面から言い合いする仲だった私たちは、印象最悪だったと思う。
ムカつくヤツだとは思うけれど、私や弟、東卍の仲間の為に協力してくれるいいヤツでもある。
好きでもないけれど、嫌いでもないと言ったところだろうか。
唯一、悟の好きなところを上げるとしたら、綺麗な彼の瞳だろう。
あの瞳で見つめられると、まるで身動きが取れないみたいに吸い込まれそうな感覚に陥る。
でも、今の私にはそれだけだった。
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作者名:月見 | 作成日時:2022年11月8日 22時