追及 ページ11
「ここだ」
傑の案内で連れられたのは、寂れたビルの地下だった。
少しの期待と緊張を胸に扉を開けば、いつも未来予測で覗いていた部屋の景色が広がっている。
けれど室内はガランとしていて、もぬけの殻だった。
「済まない。裏取りに時間を掛けすぎたようだ…」
「………もういいよ」
呪力温存のために術式は使わなかったけれど、何となく予想は出来ていた。
どうせこれも傑の計算のうちだったんでしょ?
最初から傑は私をマイキーに会わせるつもりなかったんだ。
まぁ、それをうっすら分かっていて協力した私も私だけれど。
「弟は………マイキーは、どうしても私に会いたくないんだね………」
はぁっ、と一つ息を吐く。
「傑、探してくれてありがとう」
結果的に弟には会えなかったけれど、今までの中で弟に一番近付いたのは確かだ。
「私、先に帰るね」
告げて歩きだすと背中から声がする。
「あぁ。気落ちしているところ悪いが、日没前には頼むよ」
振り返ることなく「分かってる」と返事をして私はその場をあとにした。
*****
夕方、部下に引き継ぎをして私はCLUBを出る。
信用できる部下だから、私にもしもの事があっても上手くやってくれるだろう。
外に出て歩きだそうとしたとき、店の前に見覚えのある高級車が停まっていた。
ドアが開くと、中からココとイヌピーが降りてくる。
「テメェどこに行くつもりだ?今の時間、開店準備の筈だろうが」
「野暮用よ。大体、私はお店に出ないんだから、居ても居なくても一緒なの」
ココの問いかけにそう答える。
「だが、いつもはこの時間に出掛けない。……オマエ、最近コソコソ何してる?」
イヌピーが疑いの目を私に向ける。
最近、私が百鬼夜行関連で動いているから、怪しまれたようだ。
「………なによ。出掛けちゃダメな理由でも有るわけ?」
「質問に答えろ。オマエは何を企んでいる?」
低い声で尋ねてきたイヌピーの鋭い視線が突き刺さる。
「イヌピー、ハッキリ言ってやれよ。テメェが店の屋上で
「………。」
それって、直人のことじゃん。
迂闊だった。
屋上には誰も来ないからと、長話し過ぎたようだ。
まさか、屋上でのこと見ていたヤツがいるなんて。
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作者名:月見 | 作成日時:2022年11月8日 22時