2005年─12月9日 素直じゃない ページ26
「くくっ、……くっ………くふっ…。それで?…Aに口を聞いてもらえなくなった、と?」
翌日、高専の教室で傑が笑いを堪えながら悟に尋ねていた。
「……笑い事じゃねぇよ。こっちは顎動かすと痛てぇんだよ」
そう話す悟の顎は大きく腫れている。
昨日、私がパンチをお見舞いしたからだ。
不意打ちだったからなのか、無下限を解いていたらしく、私の放った拳が綺麗に決まったらしい。
「硝子に治してもらったらどうだい?」
「やだね。自業自得だし、自分で何とかしなよ」
「………だとよ」
キッパリと言い切った硝子に悟が不貞腐れた顔で傑を見た。
「二人とも素直じゃないね」
「そんなことない!」
「そんなことねぇ!」
傑の呟きに反応すれば悟と被ってしまった。
イライラ半分、気まずさ半分の気持ちで悟を睨む。
どうやら悟も同じようで視線がかち合う。
「息はピッタリなんだけどなぁ」
傑はそう呟きながら、まだ笑いをこらえているようだ。
「大体、悟が悪い」
硝子が腕組みをして悟を見る。
「Aに対して…と言うか、女子への気遣いがなってない」
「いいや。硝子、悪いのは悟だけじゃないよ」
傑から意外な言葉が飛んで来て私と硝子は彼を見る。
「悟に対してすぐ噛みつくAにも少し問題があると思う」
「なっ!…だってそれは悟が…!」
「はい!ストップ」
そう言うと私の言葉を制止する。
「お互いに言い合うんじゃなくて、思いやって接してみたらどうだい?二人は拗れすぎてる………。いや、これは拗らせすぎと言うべきか」
「余計なお世話だ」
ケッと悟が悪態を付く。
「そうだ!仲直りに二人で出掛けてみるのはどうだい?」
「はぁ!?」
「はい?」
思わぬ傑の提案に私たちの声が重なる。
「丁度クリスマスも近いことだし。デートなんてどうかな」
「デッ、デデデッ!デートォ!?ちょっ、傑何言ってんの!?」
「そうだ!そうだ!!傑!オマエ勝手に決めんな!!」
「大体、いつ任務が入るかも分からないのに!」
「だから昼間に行くんだよ。それが嫌なら今すぐ仲直りするんだね」
ニッコリと傑に微笑まれる。
私は思わず硝子を見た。
「Aが嫌なら行く必要はない。でも、任務で一緒になることもあるし、仲直りするに越したことはないんじゃない?」
「う…」
「決まりだね。特別に僕がプロデュースしてあげよう。ちょうど明日は休みだし、いいじゃないか」
こうして私と悟のデートが計画された。
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作者名:月見 | 作成日時:2022年11月8日 22時