浅瀬を泳ぐ魚達 (ページ9)

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「ただいま～」

色んなことを思い出しながら歩いて
家に着いたのは午後8時半

『ダーさんお帰り』

俺が来ると必ず、玄関まで顔を出してくれる

いつもそうなんだけど、いつも嬉しい
Aの顔を見ると安心するから

「遅くなってごめん」

『大丈夫だよ！
明日久しぶりに、皆揃って撮影だもんね』

Aはニコニコしながら、俺とリビングに戻って
ご飯の準備をし始めた

テーブルには二人分のおかずが上がってる

手を洗いながら、隣で味噌汁をよそっているAを見る
部屋着に着替えてはいるけど
化粧は落としてないから、風呂もまだみたい

「先に食べててもよかったのに」

『やだ、ダーさんと食べる』

「何その可愛いワガママ」

『よっぽど遅くならない限り待つの！』

温かそうな湯気を上げているご飯と味噌汁を
ほっぺを膨らませながら、おぼんに乗せてる

反応が可愛くて、ついつい笑っちゃう

「俺持ってくよ」

『ありがとう

ダーさん、トンカツはソース？醤油？』

「愚問だな」

Aはその俺の返しに、
はいはーい、って言いながら
ソースと箸を持ってきて、椅子に座った

「んじゃ、いただきます」

『いただきまーす』

二人で手を合わせてから
ご飯を食べ始めた

味噌汁を一口飲むと
空っぽの胃袋に染み渡る感覚

ちょうどいい濃さと感じる味に
ずっと一緒にいるんだなぁ、って
しみじみと実感する

『あ、そう言えばさっき
マサイくんから連絡きてたよ』

「ん？俺LINE見てなかったからか」

iPhoneの電源を押してみると、
グループLINEで10件の新着通知

追い込むように後輩と仕事してたから
全然見てなかったわ

俺から返信が無いときは、
皆が念のためって気にかけてくれて、
Aにも連絡をくれる

『明日11時に、シルクくんの家集合だって』

「おー、了解」

仕事がごたついてきても、上手く調整しながら
撮影とかに出られるようにしてるんだけど
予定が頭からすっぽ抜けてる時もある

でもAが皆の連絡先知ってて、
一緒に予定を共有してるから

遅刻とか、予定すっぽかすこともあんまりない
持ち物ある時は必ず、持った？とか
声かけてくれるし

奥さんなんだけど、
俺のマネージャー兼務って感じ

ホント、Aいないと絶対こなせてないと思う

「腹いっぱいだぁ～
ご馳走さま」

『よかったよかった』

Aは空になった皿を重ねておぼんに乗せて
流しへと運んでくれた

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