浅瀬を泳ぐ魚達 (ページ7)

今日:8 hit、昨日:1 hit、合計:26,751 hit

3-2 ページ7

`

でも友達と思ってた時間が長すぎて

どんな形でもダホちゃんの近くにいれれば
それでいいって思って

自分の気持ちは言えなかった

彼女と別れたと聞いた時も

もし伝えてダメだったら？

仮にOKだったとして
別れない可能性って何％なの？

マイナスなことばっかり考えては

友達でいるほうがいいと
自分の気持ちを圧し殺すようにして

それが何年も重なりすぎた

そのまま私たちは大人になって

もう、ダホちゃんに伝えることは出来ない

「Aにはさ、一番に伝えたかった」

『…え？』

私のとこに来たのが一番最初だったみたい
思わずびっくりして固まる

「Aは俺にとって、人生の恩人だからさ！

Aがいなかったら、今の俺はないよ」

そんな風に言うなら
私をパートナーとして選んでくれたらよかったのに

でも、友達としてでもいいって望んだのは

紛れもなく、私のほうだ

『大したことしてないよ

…友達として、…当然でしょ！』

演技ばっかり上手くなって

本当の自分は出せなくて

「まじいい友達持ったわ！ありがとね」

そう言って幸せそうな顔で笑うダホちゃん

それ見てやっぱり、好きだって、思った

「じゃあ、俺行くわ！

皆にも報告行かないと」

帰るダホちゃんを玄関まで見おくる

ここで手を掴んだら

思いを伝えたら

きっと変わるだろう

ダホちゃんがいない未来に

「あ、結婚式は来てよ！
招待状送るからさ！」

『…うん、もちろん！』

「じゃ、またね！」

ダホちゃんは手を振りながら
部屋を出ていった

『……馬鹿…人の気も知らないで…』

その場にうずくまって私は泣いた

行き場を失った気持ちを閉じ込めて

また、彼の前では笑えるように

涙が枯れるまで、泣き続けた

ーーーーー
ーーー
ー

やがて
年は明けて

世間にも、ダホちゃんの結婚が報告された

沢山のお祝いのコメントが付いてるのを見て

嬉しいのと、寂しいのと
半々の気持ちを抱えている

でも涙はもう出ない

もう過去も振り返らない

「…大丈夫?A」

『…ありがと、ぺけたん

私は、もう大丈夫』

報告動画がアップされた後、
直ぐにぺけたんから電話がきた

私がダホちゃんを、好きだったこと
知ってるのはぺけたんだけ

『私も前に進まなきゃ』

「…だからって、無理は駄目だよ?」

『…少し無理してでも、強くなるよ』

招待状が届く頃には

心から、おめでとう、って言えるように

end