浅瀬を泳ぐ魚達 (ページ47)

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22.大切な人【シルク×彼女】ページ47

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連日撮影しまくった動画を

編集しまくっている今日この頃

時間を忘れてパソコンとにらめっこしていると

『シルク』

指先で肩を突っつかれて

イヤホンを外して振り返ると

時計を指差す、お風呂上がりの俺の彼女

「え?…あぁ!レックス達に餌やんないと」

熱中するって分かってるから

あらかじめ声かけて、ってお願いしといてよかった

『私も手伝う』

「さんきゅ」

準備を始める俺の隣で

それを慣れた手付きで一緒にやってくれるA

虫だし、生き餌だし

決して可愛いもんでは無いから

女の子って嫌がりそうなイメージだけど

「飯だぞ〜」

『おぉ、お腹減ってるのかな

食い付きいいね』

むしゃむしゃと食べてるその姿を

Aは本当に嬉しそうに笑って見てる

『あれ、隠れてる?』

「あー、多分ここじゃね?」

『ん?ほんとだ、いたいた』

俺が良いと思うものを、全部理解してくれる人って

すげぇ貴重だと思う

ましてや、こうやって一緒に世話してくれたり

それをする為にフォローしてくれたり

あぁ、もうこういう子に出会えることなんて

無いだろうなぁ、って思いながら

「…いつもありがとな、A」

『なに急に改まって』

お礼を言えば、驚いた顔をしたから

ふっ、と笑って

「感謝は伝えないと駄目だろ」

頭をくしゃくしゃと撫でた

Aはどこか照れくさそうに笑って

『何もしてないよ

ほら、ピンセット貸して?
あとやっとくよ』

それを隠すように

残りの餌やりを代わってくれた

「…A」

『ん?』

「あと1時間で終わっから」

『…待ってる』

「…ん」

触れるだけのキスをすれば

Aは眉を下げて、笑って見せた

その後、俺はまた編集に戻り

宣言した通り、1時間で終わらせる為に
さっき以上に集中した

本当は、今日は大切な日で

でもそれより仕事優先するって
彼氏としてどうなんだろう、って思うけど

それでも、Aとの時間は
いつも欠かさず作ってきたつもりだから

「…終わったよ、A」

『…ん、お疲れ』

必ず待っててくれるんだ、って思ってる

でも待たせるだけじゃ、駄目だから

「A」

『ん?』

俺はテーブルの下から

小さな箱を取り出して、彼女へ差し出し

「誕生日、おめでとう」

『…え…!』

箱の中身を、Aの左手の薬指へ

「…ずっと俺と、一緒にいて」

『っ…うん…!』

Aみたいな子、2度と現れないから

ちゃんと捕まえとかないとな

end