浅瀬を泳ぐ魚達 (ページ44)

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20.初めて【年上彼女×ザカオ】ページ44

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今日は、華の金曜日

"花"じゃない

"華"のほう

だって今日は
付き合って初めてのデート、っていう
特別な日だから

なんて

あんたが使うか、って言われそうなワードで
頭がいっぱいの私は

この夜をどれだけ心待ちにしていたことか

会社の後輩から、格好いい先輩、と言われる私が

らしくないスカートを履けば

「先輩もしかして今日デートですか?!」

それだけでバレてしまうのは

当然だと言われても仕方ない程に
男勝りだから、だろう

でもそれは仕事中だけのつもり

普段の私は

「Aさん!お待たせ!」

好きな人の顔を見ただけで、顔が熱くなって

少し離れた場所から駆け寄って来てくれる彼に
手を振るだけで精一杯なくらい

恋愛に関しては、不慣れなのだから

「ごめん…っ、待った…?」

『ううん、私もさっき来たところ』

待ち合わせ時間に丁度着いた
少し息を乱している彼には

楽しみ過ぎて
20分前から待ってた、って言うのは

秘密にしておこう

と思ったけど

「じゃあ、行こっか」

『あ…』

彼の手に、自然と繋がれた私の手から

浮かれているこの気持ちが

上がっていく熱と共に、伝わってしまいそう

それでも夜風が

いくらか冷ましてくれるから、大丈夫、かな

「Aさん」

『ん?』

隣を歩く彼に呼ばれ、顔を向ければ

ふ、と頬を緩ませて

「…そのスカート、可愛い」

なんて、不意を突いてくるから

『あ、ありがと…』

嬉しいやら、恥ずかしいやらで

「…照れてるAさんも、可愛い」

少しずつ冷めてきていた熱が

また上がってくるのを感じながら

彼に手を引かれ、夜の街を歩いた

初めてのデートは

一緒にご飯食べたり、買い物したり

彼とのきっかけになった
レコードのお店に行ったり

特別派手なことはしないけど

「Aさんと、一緒にいるだけで楽しい」

そう言って、その可愛い笑顔を向けられたら

『…うん、私も』

それだけで
あぁ、幸せだな、って思う

ずっと、ずっと

この夜が続いたらいいのに、なんて

『ねぇ、ザカオくん』

「ん?」

『あれ乗らない?』

ベタなデートに憧れる私が指差したものを見て

ぴく、っと反応して

一瞬引きつったように見えたけど

「うん、乗ろう」

また笑顔に戻って

私の手をきゅ、と握り直して歩き始めたから

気のせいかな、と思って

私はひとり、緊張しながら

彼と一緒に、回ってきた
赤い観覧車に乗り込んだ

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