浅瀬を泳ぐ魚達 (ページ38)

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17.時が流れても【ンダホ】ページ38

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年が変わって
本当なら実家に顔出したりするんだけど

今年はちょっと違う正月

「あっけおめ〜」

『あけおめ〜
みんな元気〜?』

「こっちは元気だよ〜
Aも元気?」

リモートで繋がれた、画面の向こうにいるのは
俺の友達のA

「Aちゃん久しぶり〜
子ダホも元気だよ〜」

『わぁ!おっきくなってきたねー!』

奥さんとも友達だから
子ダホも一緒に画面に顔出ししたら

子供大好きだから
満面の笑みを浮かべるA

加工してないのに、目がキラキラして見えるくらいだ

「色々と落ち着いたら、直接会いに来てよ」

『うんうん、絶対行く!』

「Aちゃんと話したい事いっぱいあるからさ
楽しみにしてるね

…っと、あらら、眠くなったかな?」

俺等が話していると、奥さんの腕の中で
産まれた頃よりも大きくなった声で泣く子ダホ

あやすために奥さんが立ち上がろうとする直前
頭を優しく撫でてあげた

あっという間に大きくなっていくなぁ

『…ダホちゃん、すっかりパパだね』

「あぁ、産まれた時は不安でいっぱいだったけどさ
子供の顔見て、そういうの全部吹っ飛んだ

今すんごい幸せだよ」

『そっかぁ…
ダホちゃん幸せそうだと、私も幸せだわ』

正直に心境を伝えてから
まずい、と思った

画面の中のAの表情は
笑っているのに、寂しそうだ

「…ごめん、無神経だった」

『え?いいんだよ!

友達とか、家族とか、大切な人の幸せな話って
聞いてるの好きだからさ』

気にしないでよ、なんて言ってるけど

画面の端に写ってる、ツーショットの写真と

その前に置いてあるのは
お気に入りだった銘柄のタバコ

どんなに明るく振る舞ったって

ずっとAの心には彼がいて

世の中は季節が移ろいでゆくけど

Aの目に映る景色は

きっと今もまだ、色褪せたままだ

「なんかさ、いっつも思うんだよ」

『なに?』

「どうしてなんだよ、って…

なんで連れて行ったんだよ、ってさ…」

やるせない気持ちを吐き出せば

Aは苦笑いをして

『…私もね、毎日それ思ってた

急に奪われちゃって、どうしていいか
全っ然分かんなくなってさ…』

「…ほんと、見てられなかったよ、あの時のA」

それでも

だよね、なんて言えるくらいになったんだ

ひたすら泣き続けてたAの所に
奥さんと2人、時々様子を見に行って

寄り添って、一緒に泣いた事もあった

Aが寂しそうでも、笑えるようになっただけで
俺等は凄く嬉しかった

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