浅瀬を泳ぐ魚達 (ページ27)

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「…んで、何故俺の部屋にいんの」

『え、泊まってくって言ったら
ダーマの部屋行って、って言われた』

確かに当たり前のように一緒にいたけど

俺のベッドの隣にはしっかり布団が敷かれてて
うつ伏せになって漫画を読んでいるA

仮にも20代の男女で
本当の姉弟じゃないのに

少しも危機感が無い両親に内心驚いている

「お前彼氏に怒られんぞ、男と二人で」

『怒ってくれる人はいません』

「え、ずっと付き合ってたでしょ?」

『別れた』

何とも無いように、あっさり言ってるけど

意外と心は繊細なの、俺は知ってる

「…そんな簡単に言うなよ、長かっただろ」

『別れる時は簡単なの

…簡単にね、壊れるの
長さなんて関係ない』

漫画から視線は動かないけど
その目からは何も感情が感じられない

少しやつれたのは
このせいだったか

「辛いなら辛いって言えよ
結婚秒読みだったのに

どうせ誰にも言えてないんだろ」

小さい頃の家庭環境って、実は凄い大事で
他の子たちが親に話すであろうことを
Aは話せなかったから

そのせいか、大人になった今でも
頼るのが苦手なんだと思う

だから、こっちから手を差し伸べてやらないと

『…何でダーマには分かるのよ…』

そうやって、涙を流すことだって
出来ないだろう?

「嫌でもずっと側にいたからな」

『…ほんと、昔から可愛げないんだから』

ぼろぼろと溢れる涙を拭いながら笑って

Aはゆっくり立ち上がって
ベッドに横になってる俺の隣に座る

だから俺も体を起こして

「…泣いとけば?思いっきり」

『…もう、いつからそんないい男になったのよ…』

出来るだけ優しく抱き寄せれば

わぁっ、と声を上げて泣くA

俺はただ、何も言わないで、背中をさすって
Aの気が済むまで、泣かせてあげた

声が枯れるほど散々泣いたあと

化粧がよれたのも気にしないで

『っ…やだ、こんな姿』

苦笑いしながら鼻をかんでいるA

「別に今更気にしねぇよ
何回も見てるし」

『回数じゃないの…こういうのは』

「じゃあ俺にもう見せんな」

『無理、ダーマ以外には見せられない…』

何処までも意地っ張りな奴

だけど、俺だけが
Aの本当の姿を知ってるなら

「それなら、俺とこれからも
ずっと一緒にいれば?」

幸せな顔も、泣き顔も

「俺になら全部見せれるんだろ、A」

『…いい男過ぎだよ、ダーマ』

良いとも嫌とも言わないけど

その笑顔が、答えだと思ってるから

end