浅瀬を泳ぐ魚達 (ページ24)

今日:9 hit、昨日:1 hit、合計:26,752 hit

10-2 ページ24

`

大体のデザインと、予算も相談して決まり

『じゃあ、仕上がりは2週間後で

ここにお名前と、ご連絡先お願いします』

「はーい」

お客さんに予約票を渡し、記入をお願いして

「じゃあ、お願いします」

返された票の名前の欄
苗字を見て、私はやっと思い出した

『…あ!ンダホさんだ!』

「え、今っすか?」

とても人懐っこい感じの、大きな口で作る笑顔

それは正に、夏の太陽に照らされる
向日葵のように、眩しいくらいに明るい

『ンダホさんの笑顔って、素敵ですよね』

「あ、いや、ありがとうございます!
なんか照れるな」

ついつい出てしまった私の本音に
少し困ったように、でも嬉しそうに笑って
頭を掻いていた

『仕上がりましたら、1度ご連絡しますので

この番号から掛かってきたら、私です』

「分かりました、お願いします」

私は名刺を差し出し、ンダホさんはそれを受け取って
ぺこっ、と頭を下げてお店を出て行った

「…彼女、いるんですね」

彼を見送った後
スタッフの子が私に近寄って、小さな声で囁く

『まぁ、いてもおかしくないんじゃない?』

「そうですけど、公には出来ないですよね」

『…貴女も拡散とかしたらダメよ?』

「しませんよ!
でも、なんかあんなに真剣に悩んでくれる彼がいるって
彼女さん幸せだろうなぁ〜」

彼女の言葉に、確かになぁ、と思った
オーダーメイドとか、プレゼントされてみたい

私は作る側だから、そういうこと無いけど

『でもその幸せのお手伝い出来るって嬉しいよね』

「…Aさん、天職ですよね、ほんと」

『そうかもねぇ』

彼女の言葉を聞きながら、私は裏の作業場に戻り

ンダホさんと、会ったこともない彼女さんの
幸せそうな姿を想像しながら、作成に取り掛かっていった

そして、2週間後

『いらっしゃいませ、お待ちしてました』

「めっちゃ楽しみにしてきました!」

仕上がった商品を取りに、ンダホさんがお店に来た
今日も眩しいくらいの笑顔に、私もつられて笑顔になる

『こんな感じになりましたよ』

「…すんごい綺麗」

向日葵をモチーフにした、ネックレスのトップで
8月の誕生石が埋め込まれている

「ホント、ありがとうございます

…あと、これ、良かったら」

ンダホさんから、私に差し出されたのは小さな箱

「変なものじゃないので!
開けてみてください」

『え、何だろう、いいんですか?』

ニコニコしている彼から受け取り
そっとそれを開けてみると

·