浅瀬を泳ぐ魚達 (ページ20)

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そしてひんやりしたのも束の間

背中は温かくなって
布団が急に狭く感じる

片手で私を抱き寄せ
さっき感じたのと同じ、柔らかな感触が頬にもした

まさか来ると思ってなかったから
私はとにかく、寝ているふりをして
そのまま動かないようにしたけど

シルクの寝息が聞こえてきてからも
動けないままで、眠れなくて

抱き寄せる手をそっと掴んでみたら
全く力が入っていなくて、熟睡してるのが分かったから

ゆっくりと体制を変えて
シルクと向き合うようにしてみた

片腕を枕にして、深い眠りに付いている表情は
凄く安らかで、可愛いくて

厚めの唇が薄っすらと開いている
貴重なその寝顔を見つめ続けた

側にいるのに、こんなにすれ違って生活してるんだって
シルクを見て思う

寝顔なんて、同じ生活リズムなら
見られるタイミングはきっと多い

それを貴重だなんて感じてる時点で
私達はズレているのだ

それでもこうして
同じ空間にいたいと願う気持ちは一緒だから
今、同じ布団に包まっているんだと、思いたい

シルクの白く、綺麗な肌にそっと触れる

だけどぴくりともしないから

薄っすら開いている唇に
そっとキスをしたら

「…こら、A」

『…え、シルク』

起きてたの、と私が問い掛ける前に塞がれた唇

それは少し強引で、押し付けるようなキスで

頭の中がふやけそうになる

『っ、ん』

「…眠れなかったん?」

唇が離れて、目を開けたシルクは
自分の腕枕を外して私を抱き締めた

『…なんか、ちょっとね』

「…そう」

深くは聞かないシルクに
ぎゅっと抱き付いて、私は顔を上げた

『シルクは…?編集終わったの…?』

「…いや?終わってない」

『…いいの?』

問い掛けの後、少しの沈黙が私達の間に流れてから

シルクは私のおでこにそっとキスをした

「…Aと、寝たかった

それだけ」

彼のそのたったひと言だけで
寂しさが消えていく

シルクも私の気持ちと一緒で
こうしたかったんだ

それがただ、嬉しくて

『…私も』

「ん?」

『…私も、シルクと一緒に寝たかった』

言いたくて、言えなかった気持ちを言葉にすれば
抱き締められる手に力が入って

「言うの我慢してたんだろ」

『…ん』

「すんなよ、そういうの

…Aは俺と寝るとか、嫌だと思ってたわ」

少し不貞腐れたような顔を見て、思わず笑った

『寧ろこうしてたいよ』

「んじゃこうしてよ?」

『…寝てからもしてて?』

「起きるまでと、起きてからもな?」

end