浅瀬を泳ぐ魚達 (ページ18)

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「でーきた」

『あ、可愛い』

「我ながら会心の出来」

『ありがと、モトキ』

嬉しそうに微笑むA

従兄の俺が言うのもあれだけど
Aは可愛い

それは従妹だから、っていう贔屓もあるけど
普通の女の子として見てそう思うから

いつかは
本当に良いひと見つかればな、って思う

俺はずっと一緒だけど
添い遂げる事は出来ないから

法律よりも、世間の目のほうがよっぽど厳しい

『私も出来た!』

「どれどれ」

『何に見える?』

Aの目の前には
かなり細かく、立体的に作られた男の子

手には野球のバットが握られていて
赤い帽子も被ってる

それはよく俺がゲームで使うキャラにそっくりだ

「ネスでしょ、上手いじゃん」

俺がAの作品を色んな角度から覗き込んで
その精巧さを確かめていると

一瞬、しかめっ面が視界に入ったから
視線をそちらに移す

「…どした」

『違う』

「え、違うの?」

『よく見て!』

俺はもう1回見てみるけど
どっからどう見てもネスだ

でも何か違和感がある

じっと見つめた結果、分かったのは

この子、ピンクのシャツ着てる

「…これ俺答えんの?」

『他に誰答えるひといるの?』

にやにやし始めるAに
意地の悪さを見せつけられてるような

でもキャラに似せて俺のこと作るって

「…A、俺のこと好き?」

『えっ』

「ネスに似せて俺作ったの?

そのまま俺を作るのは、恥ずかしいから?」

『ちが、それは…!』

にやけていた顔は、みるみる内に真っ赤になって
俺から視線を逸らしたから

「A」

『…なに?』

「好きだよ」

俺の言葉で、視線を戻した
でもその表情は凄く戸惑ってる

『…それ、リハビリの延長?』

「それだったらたち悪いね」

『もしそうなら、治らないのモトキのせい』

「…俺のせいだわ」

拗ねるAを抱き寄せれば

そのまま腕の中に収まって

「あんまりやり過ぎた」

『…ううん…元はと言えば私が』

「俺が、好きになり過ぎたの

Aのこと、女の子として」

いつしか血縁の情から変わったことも

Aが、やればやるほど
俺じゃないと駄目になっていくのも

気付いていたのに

隣で笑うAに
ずっと俺といてほしい、なんて

「…きっと、現れるよ
Aでも大丈夫なひと」

『…それ、すっごい無責任』

「知ってる」

『私はモトキがいいのに…』

「…嬉しいけど、それは駄目」

親愛なる、従妹に捧ぐ

大人になった俺の、ちぐはぐなそんな想い

end