浅瀬を泳ぐ魚達 (ページ1)

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1.本当の気持ち【シルク×幼なじみ】ページ1

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8月も終わりになる頃

動画の撮影や編集等々に追われる中、
盆休みの時期をはずれても、
必ず実家には帰る

まぁ、検索すればすぐ近況とか確認出来るし

たまに実家で撮ったりもするから
家族とはそんなに久しぶり、
って感じでもないんだけど

この時期は必ず帰りたくなる

ちょっと羽伸ばす、みたいな感覚

でも普段ほぼ睡眠時間取ってない体は、
それに順応し過ぎてて
家族が寝ても、自分はすぐには眠れない

少し歩こうかなと思って
寝静まった家をひとり出た

「ふぁ…」

あくびは出んだけどなぁ

今は夜の10時
これから寝ても、たぶん1時には目が覚める

近くのコンビニでも入ろうかと思って
入り口に目を遣ると
よく見知った顔が店内から出てきた

「あ、」

『あれ、シルク？』

俺の幼なじみのAだった

体よりも少し大きめなTシャツと
デニムのハーフパンツ
風呂上がりなのか、髪が少し濡れてる

俺のとこまで、入り口から小走りで駆け寄ってきた

『帰ってきてたんだ』

「一昨日からな
夜に女ひとりで出歩いて、あぶねーぞ」

そう言ってAの顔を見ると
なんか少し目が赤い

「なに、お前泣いてたの？」

『…んー、まぁ、色々あって、ね？』

Aはへらっ、と眉を少し下げて笑ってみせた

その笑顔は無理矢理作ってるってバレバレで
昔っから強がりなとこ、変わらない

「…しょーがねーなぁ
話くらい聞いてやるよ」

『…ありがと
いつも優しいのね、シルクは』

「まーな」

そう言って笑ってみせたら、
何それー、って言いながら笑ってくれた

Aは、笑顔のほうが可愛い
それを見たいだけ

コンビニから少し離れた公園で、
俺たちはブランコに揺られながら
さっきAが買ったビールを飲んでいた

『懐かしいね～、この公園
シルクたちと皆で、よく遊んでたっけ』

「そうだな～、あれから20年くらい経つのか…

あっという間だな」

まさか大人になってからここに来るなんて

ここは幼なじみ皆で遊んだ場所
もちろんAも一緒だった

そして、高校生の時に
Aに好きと言われて、
ごめん、と返した場所

俺の親友がAを好きで

自分の気持ちに蓋をして、
そいつを応援するって言ったその矢先

Aに想いを告げられて

俺はひと言、ごめん、としか言えなかった

受け入れたい、Aの気持ちよりも

親友を裏切るようなことをした後の
代償を恐れたんだ

Aを傷付けても
自分が傷付かないようにした

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