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本日の講義が終わり、あとは帰宅するだけ。
でも今日はなぜかその気分にならず、家とは逆方向行きの電車に乗った。
特に目的地はなかったので降りる人が一番多い駅で降りた。
駅から出ると色とりどりの町並みが私の視覚から取り込まれる。
「び、びろーど町...?」
読み慣れない綴りの英語に合っているのか不安を覚え、町中へと繰り出す。
どうやら演劇の町らしく、至る所でビラが配られている。
時には道端で演劇をしている人も見える。客寄せの一種だろう。
楽しい町だな、なんて目移りしていると私の視界を横切った一匹の猫と目があった。
足に広がる赤い斑点をよくよく見るとそれはまだ鮮やかな色の血だった。
「た、大変...!」
「なー」と鳴く猫の声が聞こえた気がした。
残念ながら応急処置の出来そうなものは持っていないし、家まで遠くて間に合うかどうか。
大通りならばお客さんや劇団の方が助けてもらえそうだが、私が今いるのは大通りから一本入った裏道。
つまり誰も通らない可能性の方が高い。
とりあえず大通りに出ようと立ち上がろうとしたその時。
[大丈夫か?]
「!!?」
目の前に突如現れたスマホ、更にそのスマホにはメモ機能のページに私を心配する文章が付いていた。
振り返るとそこに立っていたのは茶髪の男性。
「あ、あのっ!この猫が怪我していて...手当して欲しいんですけど...!」
そう告げると男性は私の肩口から猫をのぞき込み、手早くスマホに文字を打っていた。
ヤンキーみたいな見た目をしているが聞き入れてくれるだろうか.....
[家で手当するから付いてきてくれる?]
またもやスマホに打ち込まれた文字を見せられる。
一安心し、小さく息を吐いてから首を縦に振り、怪我を悪化させないようにゆっくりと立ち上がった。
それにしてもこの男性は私の耳が聞こえないことをどこで知ったのだろうか?
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瑠威神(プロフ) - 夜分遅くにコメント失礼します。初めまして、留威神と申します。楽しく読ませて頂きました。京様のご都合がよろしければ続きをお願い致します。無理言ってしまい申し訳ございません。楽しみにお待ちしております。 (2021年10月8日 3時) (レス) @page11 id: f19e899b2c (このIDを非表示/違反報告)
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