【歌い手】Finale【XYZ】

12杯目 ページ14

扉を開けるとそこは部屋だった。

アンティーク調じゃない、普通の、部屋。

そこはどうやらマンションの一室らしく、玄関には一足の靴と、かすかに聞こえるテレビの音。

靴の主に習って、丁寧に靴を並べて部屋の中へお邪魔した。


？「いらっしゃーい」


テレビ画面から目を離さず抜けた声を出すのは青っぽい髪をした男性。

ゲームをしているらしく、テレビ画面にはピコピコと動くキャラが表示されている。

ここに座れと言わんばかりに男性の隣に置かれた座布団に腰を下ろす。


『......えっと、』

そらる「ああ、オレはそらるね。ゆっくりして行ってよ、オレの家じゃないけど」

『は、はぁ......？』


正直全く用がないのならば早く次へ行かせて欲しいのだが。

そんな風に若干イライラしながらキャラが映る画面を見ていると、唐突にそらるさんがこんなことを聞いてきた。


そらる「この部屋に見覚え無い？」

『見覚え......と言われましても記憶が無くて...』

そらる「知ってる」


首を傾げてから、部屋をぐるりと見回す。

目に付いたのはダイニングテーブル横に置かれたパソコンと大量のコードだ。

それと、見慣れぬ機械。


『強いて言うならあれ、ですかね』


パソコンと機械を指さす。

名前も知らないあの機械の使い方を、私は知っているような気がした。

そらるさんはやっと画面から目を離して私の指の先を見た。

そして


「何となくは覚えているもんなんだな」


と呟いた。

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