スミレ ページ10
「なら、俺に教えてくれよ その小説の面白さってやつを」
いつもは話しかけられもしない君からこんなことを言われたらあの日はとても驚きました
「いいですけど、さっきみたいに興奮してしまうかもしれませんけどいいですか？」
「大丈夫やって、気にせんでええから」
その日から私は一冊一冊君にわかりやすい様に教え始めた
「へぇ〜、少年漫画にありそうな展開やな〜」
「まあ、小説も一種の架空世界みたいなものなのでそうなのかもしれませんね」
「漫画とか絵で表したら俺も理解しやすいんだけどな」
「小説は小説にしか表現できないこともあるので小説のままで私はいいと思うんですけどね」
「この前話した本の続き出たらしいんけど知ってた？」
「あ、はい！今日買いに行こうかと思っていました ご存知だったのですか？」
「い、いや たまたま本屋の前に置いてあったから 知ってんのかな〜って思っただけやから」
「もし良ければこの前紹介してもらった本 借りてもええ？」
少しずつ君は本を好きになってくれてる様で
「はい、明日持ってきますね」
とても嬉しかった
クリスマス頃になれば君は私と一緒に本を読んでいた
お互いに本を読んで感想を言い合って
学校の帰りに本屋に寄ってみたりして
とても楽しい時間になっていた
そこで私は昔母親から聞いた方法であるものをプレゼントした
「これ、俺に？」
渡したのはスミレの栞
昨日の夜 スミレの押し花を入れて手作りの栞を作った
「うん、最近 読むページとかも増えたでしょ？手作りだし、花も勝手に決めちゃったから気に入らなかったら捨ててもいいんだけど…」
すると君はにっこり笑って
「ありがとう！めっちゃ大事にする」
とその栞を受け取ってくれた
そこから数週間後
私には困ったことが起きていた
「あの栞がない…」
あの栞とは私がいつも使っているお気に入りの栞だった 母親から誕生日プレゼントで貰ってデザインも素敵だったから使い続けていた
でも、教室も図書室も探したけれど見つからず途方に暮れていた
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