うらたぬき／花になれたら／雪月うさ ページ13
ー親の昔の夢ー
それが今日の授業の内容。
各自、書き上げた原稿用紙を机に置き、挙手をする。
先生が私の名前を呼ぶ。
「はい！」
お母さんの話を元に作った恋愛小説を私は読み上げる。
くっそ甘いラブストーリーを。
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都内にあるとある私立高校。
母とその人は高校の先輩、後輩という関係でした。
「お前、カラオケ来て１曲も歌わねぇとかやべぇな。」
「歌いたくないので。」
母と彼の出会いはこの会話からでした。
母は音痴で歌うことが嫌いだったらしく、カラオケに行っても全く歌わなかったそうです。
じゃあなんで行ったんだよ、って思いますよね。
「じゃーさ、俺が師匠になってやろうか？」
「師匠？」
「そーそ。」
彼は歌が上手く、しかもイケボ。
外見は悪くない。
「お願いします！」
あの時は顔しか見てなかった、と母は後に言っていました。
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「ここの音程がイマイチ分かんなくて。」
「ここはさ………」
何故か歌のための機会が揃いまくった彼の家で私の特訓は始まった。
こんな凄い家だから彼は歌が上手いのだろうか、いや、上手いからあるのか？
「聞いてたかー？」
「あ、はい！」
一人でとは言わないからせめて合唱で普通に歌うことが目標。
彼が卒業するまでの１年間が特訓の期間。
それまでにまともに歌えるようにしなければと闘士を燃やす。
が
「お前上達しねぇな………」
「すみません。」
「……気にすんな、歌いまくりゃ歌えるようになるだろー
ほら、もっかいいくぞー」
彼は優しくて、申し訳のなさで泣きそうになるくらい優しくて。
だけど、そんな優しい彼に目をつけるのは私だけではなかった。
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