City holic【Juri.T】

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今年の梅雨入りは例年よりだいぶ早いらしい。

ナントカっていう風がナントカっていう現象を引き起こしてるのが原因だとか。

いつものお天気お姉さんが可愛らしいマスコットと、イラストで説明していたけど惰性で見ている私の頭には入ってこなかった。



「面倒くさいなぁ」



言葉にしてみればさらにそう思えてしまう。
雨こそ降ってはいないものの、空気がどんより重たい。

空には灰色の分厚い雲。
今にも降りだしそうだ。
こういう時に限って大事な講義があるんだもん。


のっそりとソファから離れ、いつものリュックを担ぐ。




邪魔にならないことを最重要事項とした髪型。
ラフさを全面に出した服装。
YouTubeで見た時短メイク。

体中から気怠さが表れてるみたい。
これじゃダメだと、友達に貰った少し色が強めの口紅を。

引いてみたけど、活気溢れる赤はあまりにも今の私に不似合いで、ティッシュで拭き取った。



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気分が乗らない日。
運が悪い日。

そんな日は誰にでもあるものだと思う。
そしてそういう日に限って更に気分を下げる出来事が起きるんだ。


今日はバイトも入ってないし。
梅雨が本格的に始まったら出掛けるのが億劫になるだろうから。

本来の私の趣味である古本屋巡りでもしようかな、と珍しくアクティブなことを考えていた。

あそこの古本屋さんの近くには新しくカフェが出来たらしいし。
そこで買った本でも読もう。


自分で膨らませた想像に頬が緩む。



『すみません、こないだの強風で片付けが間に合いません。至急シフト入れる方いますか』


大学の敷地から出るとピコン、とLINE通知。
土下座してる絵文字を使う辺りに店長の可愛らしさが表れている。


『ごめんなさい無理です』

『今手が離せなくて』


続けてピコンピコンと返信が画面に出てくる。

今日シフトなのは確か、店長と松村さんだ。
で、それ以外の店員の返事がノー。
ってつまり、私しか行けない状況じゃん。

今日は予定を組んでみたんだけどな。



『今から向かいます』

『坂内さんありがとう。助かります』


店長、おじいちゃんなのに文字打つの速いよね。

なんて思いながら。
誰かが私を必要としてくれるから、こうして予定を変更してまでバイトに向かってしまうんだ。

そうすることでしか、存在意義を見出だせないから。


「おはようございます」

「おはようの時間帯じゃないのよ、」


いつもの松村さんの突っ込みにニコニコしながら、ささっと着替えを済ませた。


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