ふたり。(短編集)

金曜日のキミ(KiF) ページ15

△ノンリアル


f .




「 らっしゃっせ〜。」


だるさ満点の声が聞こえれば


あぁ今週も仕事頑張ったなって実感。


にやける顔を必死に隠して


自動ドアを潜り抜ける。


毎週金曜日のこの時間。


ここに用を探して立ち寄るのは


「 おっ。今週もお疲れ。」


そう彼、"キタヤマ"さんに会うため。


「 ありがとうございます。


こちらこそ、今週もお疲れ様です。」









って！！！髪色が金髪になってる！！！


かっこよすぎる、、眩しすぎる！！！


脳内パニックに陥って


口早にその会話を交わして


デザートコーナーに逃げ込んだ。


だけど、


「 俺の、、プリン、、。」


キタヤマさんに会うことの次ぐらいに


楽しみにしているプリンが無いじゃんかあ。


仕方なく横にあったエクレアを手にとって


トボトボとレジに向かう俺。









支払いを終えて


キタヤマさんはエクレアを袋に入れてから


「 あれ、今日いつものプリンは？」


きょとんとそう問われて


「 売り切れみたいで、、残念です。」


肩をすくめる仕草をして見せたら


レジの下に手を伸ばして


ふふんと得意げに俺に見せたそれは









「 えっ、、プリン！」


「 ラスト一個になっちゃってたから


お前の分、特別にキープしといてやったの。」


嬉しくて軽くフリーズしてたら


レジに通さずに袋に突っ込むから


「 いやいやっそのお金払います！！」


「 いいのいいの。


だって今日はプレミアムフライデーだぜ？


一ヶ月よく頑張りましたの日だろ。


ほら、遠慮せずに。」


押しつけられるように受け取った袋を提げて


「 プリン、ありがとうございます。


おやすみなさい。」


多分赤くなってるであろう顔を見られたくなくて


顔を伏せたまま、小さく頭を下げた。





背を向けドアが開いたと同時


「 また来週な。」


って優しい声が聞こえて


「 また来週。」


振り向いて口早に返した言葉に、


キタヤマさんが片側の口角だけ上げて


ふっと、鼻で笑った。

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