その心情を証明せよ。【青葉城西】

背徳感と優越感 ページ6

「及川って、他の女差し置いてでもお前選ぶよな」





クラスで普段から孤立して浮いていた私は、気づいたら花巻と行動することが増えていた。


これはきっと、及川の周りをうろつく私に対する、ほんの少しの興味なのだと思う。







「それは及川の優しさ。私いつも一人だから」







移動教室で次の授業の教材を胸に抱えながら花巻の隣を歩く。


多分及川は、私じゃない女の子でもそうしたと思う。中学からの友達がたまたま私だった、ただそれだけ。









「でもお前、彼女よりも優先されてたじゃん。部活終わりも彼女が折角待ってても、お前見つけたらそっち行ってよ？」








彼女ができても私を優先する及川に、当時の彼の彼女には少し申し訳ないとは思ったけど、内心嬉しかったし勝った気になれた。


彼女よりも、私を選んでくれる。そんな安心感を、及川は私に与えた。


それが原因で別れたこともあるって、風の噂で聞いた。及川はそれを私に隠しているようだったけど、本当に私のせいなんだと思う。


でも少し悔しかったのは、岩泉がその彼女に向ける表情が、私に対する冷たい態度とは明らかに違ったこと。


私以外の女には優しいってこと。岩泉は私が嫌いなんだと思う。


でも、私が誰に嫌われても、及川だけは味方になってくれた。


だからこそ私は、誰を差し置いてでも、私利私欲の為でも、及川の一番になりたいんだ。








「あ、及川」








花巻の言葉に、視線の先を辿ると見慣れた光景。


女子数人に囲まれて楽しそうに話す及川の姿。


その女子の一人が私の姿を見るなり、隣にいた女子にこそっと耳打ちをした。


それを見て私に気づいたらしい及川が、名前を呼んで手を振った。









「行かねえの」









隣にいる花巻が、私にしか聞こえない声で小さく言う。


今あの場所に私が行くのは完全にアウェイ。


私って、強靭なメンタルを持っているように見えて意外と繊細だったりする。


陰口とかにはもう何とも思わないけど、慣れるまでは相当時間がかかった。

空気が振動して→←勝てない言い訳

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す