その心情を証明せよ。【青葉城西】

手探り ページ16

足を進める岩泉に対して、私は立ち止まったまま。


そんな私を、岩泉が肩越しに振り返る。








「帰るぞ」







私は、動かない。


だって、岩泉の家の方向ってそっちじゃないでしょう。


私が無言で進行方向に向かって右に腕を広げ指差すと、その意図を酌んだ岩泉が小さく息を吐く。







「送る」







岩泉のそういうところが、よく、わからない。


だって、私のこと嫌いなんでしょう？








「いらない」

「もう夜遅えし、危ねえだろうが」

「いらないって言ってんの」

「頑固だな、行くぞ」







さっき私に手を振り払われたからだろうか。


岩泉は私に触れることなく、肩に掛けていた鞄を掴む。








「私のこと嫌いなんでしょう？放っておいて」








全然、落ち着いてない。



これは、私の意地だった。



岩泉が鞄を掴む手を緩めた隙を見計らって、私は岩泉を横切る。



早足で、帰路につく。



後ろから足音がする。









「ついてこないで」

「…」

「…」

「…」









返事の代わりに、足音が鳴る。









「…いらないってば！」







振り返ると、数歩後ろで岩泉も足を止めた。



私のこと、嫌いなくせに。



結局、岩泉は私の家の前まで付いてきていた。



私が家のドアに手を掛けると、岩泉は踵を返した。



私は、不器用な彼の優しさに、戸惑いを隠せなかった。



その日、どうするのかが正解だったか、いつになってもわからないままだった。

失恋と盲目→←好きと嫌いの定義

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す