早起きは彼への愛情 ページ2
上履きを取り出していると、遠くで下級生数人が「及川センパーイ!」と声を揃えた。
そんな彼女たちに、及川は相変わらずのサービススマイルを送って、キャッキャする女の子たちを見ては楽しんでいる。
その様子を見ても何とも思わないのは、及川が私に与えた心の余裕。
「及川、あのね」
すでに上履きに履き替えていた及川が私を待ってくれていた。その横には、当たり前の顔をして岩泉もいる。
「私、及川にお弁当作ってきたんだ!」
手に持った小さめのランチバッグを見せて、お昼休みの約束を取り付ける。
こんな手回ししなくても、いつも及川と食べてるんだけど。
「えっ、Aが俺のために!?」
こんな狡い私だから、女子たちの反感を買うのは必然。
でも日常茶飯事な私への陰口にはもう慣れてしまったから、痛くない。少し痒いなって思う程度。
だって、彼女たちからは及川に気持ちを伝える気を感じられないから。
「そ!早起きして頑張った!」
だからこそ、悔しいと思うことがあって。
「うれしー!ありがとう!俺今日購買だったんだよね〜」
私は、彼女たちに劣等を感じることがある。
それは。
―――それは、すでに、私が及川に玉砕しているということ。
その時点で、私は彼女たちよりも一歩でも数歩でも後ろにいる。引け目を感じずにはいられない。
実際、私に与えられているチャンスの方が遥かに多いはずなのに、及川を自分のものにできるという自信がない。
だって彼女たちは、私と違って自分の気持ちを伝えることができるのだから。
でも伝えようともせず、私にばかり僻みの感情を向ける彼女たちが腹立たしくて仕方ない。負けたくない。
「岩泉のは、ないから」
私と及川の後ろを歩く岩泉を振り返ると「いらねえよ」という乾いた返事が返ってきた。
でも、私はまだ諦めていない。
及川の傍にいたい。その気持ちは振られてからも変わらない。寧ろ増す一方。
私に期待させてしまう、及川も悪いんだ。自分に好意のある女の子に変わらず構ってしまっているのだから。
でもそれが、及川のいいところであり、欠点でもある。
彼女になれなくても、友達としてでもいい。どんな形であれ、及川の隣にいたい。
そう、私に思わせてしまったのは紛れもなく及川自身なのだから。
仕方ない、よね。
683人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いおり - 道徳の教科書に載ればいいのにぃ!!泣くことしか出来ませんが…凄く素敵な作品で本当に号泣しました!!1日で全部読ませて頂きましたがここまで素晴らしい小説は今までで一番だと思います!! (2020年12月9日 15時) (レス) id: 5e524467c0 (このIDを非表示/違反報告)
雅 - 本編は全て夢主目線なのに他の登場人物の感情も伝わってきて、切なくなりました。作者様の描写が繊細だからこそ、読み手にしっかり伝わるのだと思います。番外編でまた深く心情が知れて切なくなりました。特にマッキーがかなりグッときました。すごく素敵な作品でした! (2020年6月22日 9時) (レス) id: 2f4dc25fc0 (このIDを非表示/違反報告)
おかか - めっちゃ面白かったです!一人一人の言動の真意とかしっかり話が作られていて、リアルで凄いです! (2020年6月21日 9時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
ルーテル(プロフ) - 今まで読んだ占ツク作品で1番好きかもしれません…1人1人の心情がリアルでぐちゃぐちゃなのに真っ直ぐな恋心がとても心地いい作品でした!マッキーの切なさが一番心に来ました…いい作品をありがとうございました! (2020年5月31日 22時) (レス) id: 98b39f25a9 (このIDを非表示/違反報告)
モンブラン♪@アップルパイも捨てがたい(プロフ) - 泣いた...岩泉夢主さん好きなのかなぁ?は勘違いか...もうカッコよすぎ...ごちそうさまですっ (2020年1月13日 12時) (レス) id: 538cc2e76e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:小鈴 | 作成日時:2019年10月17日 21時